月影が森を照らす。
森の中に、そびえ立つは荘厳な城。
城の主は、青い髪と青い瞳を持つ青年。
名を、カイザレと言う。
使用人もいないこの城は、昼も夜も、ひっそりとしていた。
カイザレは、この静けさを好んでいた。
今日も一人、森を見渡せる最上階の窓辺で、
月を愛でながらグラスを傾けていた。
コン、コン。
ノックの音のあと、
「お兄様」
小鳥のさえずりのような声が、静かな部屋に響き渡る。
「どうした、ミクレチア」
キィ…と恐る恐るドアが開いた。
入ってきたのは、この城の『姫』とも言うべき少女だ。
いつから切っていないのだろうか、
床につきそうなほど長い髪を頭の高いところで二つに縛っている。
「ああ、今日も美しい髪だな」
カイザレは、ミクレチアの髪に触れた。
手を伸ばされたことに一瞬身を引きそうになったミクレチアだが、
それを誤魔化すように喋り始めた。
「お兄様、またお酒を飲んでいらっしゃるのですか?
ここのところ毎日…それではお体を壊されてしまいます…!」
「ほんの少しだけさ」
カイザレはサイドテーブルにグラスを置き、少女の瞳を覗き込んだ。
「心配してくれるのかい?優しい子だ」
吐息の触れ合う距離に、思わずミクレチアは頬を染めた。
薄暗いランプが照らすだけの部屋だったが、
その表情は空高く昇った月によって映し出されていた。
カイザレが長く抱え続けていたパンドラの箱を開けてしまうほど、鮮やかに。
「…っ」
ミクレチアには、声を発する暇もなかった。
カイザレには、思いとどまることができなかった。
ミクレチアにはなぜ今自分が兄の腕の中にいるのかが分からなかった。
「おに、ぃさま…?」
やっとことで声を絞り出して、その理由をカイザレに尋ねようとしていた。
しかし、抱きしめる腕の力は緩まない。
緑色の艶めく髪にカイザレの息がかかり、囁きが聞こえた。
『愛している』
時間が、止まった。
否、部屋にあった時計の秒針だけが響いていた。
「お兄様、お戯れを…」
少し緩んだ腕の中から、ぴったりと触れ合っていた体を離し、兄を見上げた。
青いその瞳は、大人に成り切れていないミクレチアにも分かるほど、熱の色を帯びていた。
やっとの思いで平静を装うとしていたのに、もうその場にいることができなかった。
ミクレチアは、持てる力で兄を突き放した。
さやさやと、布の擦れる音が遠ざかっていくのを聞きながら、
カイザレはグラスに残っていた真っ赤な液体を飲み干した。
窓からは、ミクレチアが森に向かっていく姿が見えていた。
城から歩いてすぐのところに、森が開けた場所がある。
春になるとシロツメクサで埋め尽くされる草原で、
幼き日の二人はよく四葉のクローバーを探したり、
花の冠を作ったりして遊んでいた。
ミクレチアは、気づけばそこに来ていた。
兄との暖かな思い出がたくさん詰まった場所に。
そうして、思い返していた。
いつからだろう、あの暖かな日々が、ひっそりとした毎日に変わったのは。
いつからだろう、兄のお日様のような笑顔が、翳った微笑みに変わったのは。
兄に言われるまま伸ばし始めたこの髪が、日を重ねるごとに重みを増し、
城に影を落としていったような気がした。
気づけば、視線の先の草が滴っていた。
たった二人きりの家族。
兄に喜んでほしくて、髪の手入れも欠かさなかったのに。
兄のために、大好きな兄のために。
大好き、だいすき、ダイスキ…。
「ミクレチア、やはりここにいたのか」
カイザレの声に、ミクレチアは振り返らなかった。
「さあ、城へ戻ろう。夜も深まってきた」
ミクレチアがゆっくりとカイザレを見やると、自らに差し伸べられた手があった。
カイザレは微笑んでいたが、ミクレチアにはそれが追い詰められているように見えた。
その手を取らなければ、先ほど兄を振り払い逃げ出した自分を、
もう二度とカイザレは見てはくれない、そう直感していた。
「私…分かりません」
「ん?」
「お兄様と、ずっと、ずっと一緒にいたいの…なのに」
差し出された大きな手がぴくりと反応した。
宝石のような瞳からはぽろぽろと涙が零れた。
カイザレは、伸ばしていた手で、ミクレチアの頬を包み
「私たちは、ずっと、一緒だ」
少し震えた声でそう言った。
「お兄様…」
「こんなに冷たくなっているではないか。早く帰ろう」
「…はい!」
カイザレに抱きつき、ミクレチアの涙で光った瞳が、明るい表情になった。
ミクレチアの体温を感じながら、カイザレは本能的に笑みを浮かべていた。
「こっちへおいで、暖めてあげるよ」
「…ずっと、捕まえていて」
「離さない。例え神に背いても…地の果てまで」
二つの影が、一つに重なり合った。
囚われたのは誰なのか (カンタレラ妄想小説)
黒うさPのカンタレラ(http://www.nicovideo.jp/watch/sm2393562)が
すばらしすぎて、ついやってしまいました(ーー;;;;;)
絵を描く能力がないので、文章で。
こんなストーリーのPVが頭の中にあります。
『2番のサビ』の描写は敢えて避けました。
文章で書くと雰囲気出せなそうだったので、妄想だけにしておきます。
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