雨が染み込むアスファルト。座り込んで濡れている君は随分小さく見えた。
長い髪が雨で首筋に張り付いて気持ち悪そうだと思った。しかも素足で、手を伸ばすべきかと迷ったがとりあえず彼女の前にしゃがみ込んだ。目が合って、彼女が微笑んだ。
「やっぱりだね。ここに来るって思ってたんだ」
傘入れて、とビニール傘を引き寄せる彼女。
いつもの彼女じゃないことはとっくに気付いていた。
「待ってたんだよ、ずっと。近衛くん」
ただ黙ることしかできない。
聞きたくない、聞きたくないと脳味噌が暴れているみたいだ。
痛い。
「き、やの、さ」
「近衛くん」
きっと今の僕は酷い顔をしてるんだろう。彼女は僕を遮るけど、でも、今言わないと。
「木屋野さん、あの、僕はずっと」
「近衛くん聞いて」
「僕は、僕は、木屋野さんのことが」
「近衛くん」
「初めて会った時から、ずっと」
「止めて」
刺さる様な声だ。
じわり、と彼女が滲んで見えなくなる。嫌だ―――
「あのね近衛くん」
「さようなら、元気でね」
―――嫌だ!!
視界が真っ黒に塗りつぶされる。見えないけど咄嗟に手を伸ばして彼女の肩を掴む。―――ない!
そんな、まさか、今ので?あんなにもあっさり、嘘だよね?
『私、嘘は吐かない主義だから』
不敵な彼女の笑顔が僕の思考を邪魔する。待ってくれ、今は、今は!
彼女がいなくなったらどうしてくれるんだよ!!
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」
何処にもいかないで
遠くになんてならないで
僕はずっと
『二人だけの秘密、だよ』
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