予想はしていた通りだけど、中尉の位は取り上げられることになった。まあ当たり前だよなと小さく微笑んだ僕に大尉は続けて告げた。その代りと言うのは可笑しいのかも知れないが、今回の件は事情を知っている者だけの秘密になっているから安心しろ、と。大尉が良かったわねと言って僕の肩に手を置いたとき、僕は愕然とした。彼らはなにひとつ、気付いていないんだと分かったのだ。

「―大尉、」
「どうかしたかしら、中尉―いえ、元中尉」
「いっそ名前で構いませんよ―どういうことですか、秘密って。つまり、大尉とか上の方だけしか知らないっていうことですか!」
「ええ、外部に口外してはならない―そう命令されてるの。それがどうかして?」
「それは可笑しいです、可笑しい!僕は寧ろ―」

き、と大尉の鋭い赤が刺さった。彼女の赤い目はどうしてか、いつも僕を呪縛のように束縛して捕らえてしまう。発せられるはずだった言葉が喉の奥で消えて、彼女の赤い唇が咎めるように歌う。

「良いこと、始音元中尉―可笑しなこと口走るんじゃなくってよ。貴方の立場だけじゃなくこの私の立場まで危うくするつもりなの?」
「…申し訳ありません」

じっと見据えられて耐えられず言えば、彼女は大きく溜息を零して踵を返した。かつかつと冷たく硬い音が長く伸びる通路に反射して響き続ける。
だけど彼女もまた、なにも気付いていないのだった。僕は壁に伸びる自分の影をじっと見詰めた。すうっと青い彼は立ち上がり、立ち尽くす僕を笑うように歩き出す。置いていかれた僕を振り返り、その孤独を慰めるように微笑み、その悲しみを別つように手を伸ばす。僕は目を閉じた。手を伸ばした。その手がなにかを掠めることはなかった。

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アンビバレント2 (軍パロ注意・KAITOMEIKO)

まさかの続き?もの
MEIKOがちがう、これはめーちゃんじゃない!

よく分からん軍パロ、これからも続きそうな予感。

閲覧数:142

投稿日:2008/11/07 23:40:46

文字数:715文字

カテゴリ:小説

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