＃３２



施設の東にあらわれたバグの対応にむかったレンとリンは、息のあったコンビネーションを見せる


「リン！崖の上のやつを頼む！」

「まかせて！」


リンが投げ焙烙を崖上に投げる

ボーン！という音と共に崖上の敵の一部が吹き飛ぶ

その間、リンの周りに寄ってくるバグをレンが【黄双】で斬る


「レン！肩かして！」


リンの言葉に反応し、レンが自分の肩をリンが踏み台にしやすいようにしゃがむ

それと同時にリンが【白鳴】を抜き、レンの肩を踏み台にして超人的な跳躍を見せる

レンはリンに合わせて勢いよくたちあがって、跳躍を援護する

その結果、リンは崖上まで到達


「よし！成功！」


リンが、にっと笑って、そのまま崖上の敵を斬る



ミクだけでなく、二人も確実に成長していた

特に二人で戦うようになってからの連携は、まさに一心同体といった動き




「よし！このままなら……いける！」


崖下で戦うレンは数が減った相手を見て確信する



「きゃぁぁぁああぁぁぁ！！！」


その時、リンの悲鳴がレンにきこえた


「リン！」


レンは急いで崖上に上がれる個所を探す

リンのような超人的な跳躍力をもっていないレンにとって、崖をのぼるのは一苦労


「レン！助けて！……レーン！」


リンの助けを呼ぶ声がきこえ、ますます焦るレン


「リーン！！！……くっ……こうなったら！」


双剣【黄双】の一本を崖の中腹の壁に投げつける

ガッ！と壁に刺さった【黄双】

まず、レンは敵を踏み台にし、中腹に刺さる刀まで飛んだ

そして、さらにその刀を踏み台にして、崖上にのぼる


「リーン！！！どこだ！！」


レンが大声をあげて、崖上を見渡す


「やぁぁぁああぁぁ！」


リンの悲鳴がバグの集団の中から聞こえる


「リーン！！」


レンはリンの名前を叫びながら、一本になってしまった【黄双】で敵を強引になぎ払っていく

強引ゆえ、敵からの反撃もかなり食らってしまう


「レン！はやく！やぁぁぁああぁぁ！！」


リンの悲鳴が、レンを余計に焦らせる


「まってろ！！リン！いまいく！」


レンは一目散にリンの声のもとに走る





そして……レンがリンのもとにたどりつく……


「……レン。ごめん、しくじった」


リンは右脚から出血していて、立てないようだ

他にも肩や脇腹からも滲んでいる

通信用のインカムも壊れている

そんな状況でもいままで、クナイや投げ焙烙などの飛び道具でなんとか凌いでいたようだ


「早くここから逃げなきゃ……」


リンが妙に震えている


「リン、そんなに震えてどうした……心配しなくても、俺が運んでやる」

「だって……【あれ】がいるの！」


リンがそういって、指さした方にあったのは……

空間に穴のあいたような……【例の黒い塊】


「あれが……」


レンがあっけにとられていると、黒い塊から鋭い触手がリンに向かって伸びてくる


「リンっ！！！」


次の瞬間、ドスッと鈍い音をたてて、リンをかばったレンの背中に刺さる


「くっ……くっぅ……」


レンの顔が苦痛でゆがむ

そして、そのまま黒い触手がレンをなぎ払って吹き飛ばす


「がはっ！！……く、くそぉぉ」


レンが体に力を入れようとする……が、目がかすむ……


黒い塊の触手はリンの両足に絡みつき、塊に引きずり込もうとする


「え……や、やだ！はなして！」


リンが一生懸命、それを引き離そうとするが、びくともしない

辺りの岩や石につかまろうとしても、引く力の方が強い


「やだ……やだよ！レン！助けて！いや！」


リンが涙目でレンの手を求めて、手を伸ばす


「リ……リン……」


レンも動かない体で必死に手を伸ばすが、まともに前に進めない

その間にも、リンの体は黒い塊に飲み込まれていく


「レン！たすけて！レンっ！！レ……」


そして……リンの声が聞こえなくなった……



黒い塊と残ったバグたちは、リンを飲みこむとその場から消えた……



「リ……ン……」


レンも力尽きて、その場に倒れ込んだ