ここは、某所、工業地帯―
海は、排水によって汚された黒い水たまり。
街は、スモッグに覆われ、
ほぼ毎日の、天気予報が、曇り空という。
発電所が近いのか
辺りには、大きな送電塔がそびえ立っている。
数年前までは、かなりの景気が伸びていて
活気あった町並みも、
今では、すっかり廃墟(はいきょ)へ
変わり果ててしまった。
働く人たちは、
数を減らされ、
生きる道を絶たされて、
街を放浪し、酒に溺れ、
ダンボールに横になっている姿がある。
その中には、廃工場の倉庫で、
ひっそりと暮らしている者もいる。
そんな酷い世界観に、
不思議な噂話がある。
それは、
『人を食べる』という
人ならざる者がいるという。
≪カニバリズム≫・・・
人肉嗜食(じんにくししょく)―
または、その思考。
つまり人の肉を食べる狂人である。
宗教的な一面もあるが、
大概は、本人の趣向によるものだろう。
この噂話には・・・
話を聞くものも、数少なく、
知ってても、その姿を誰も見たことがないという・・・
最近、一週間に3人も殺される事件があった。
遺体からは、噛みついた歯型や、
落ちていた犯人の物と見られる食べ物カスから、
人物を特定ができないという異例の事態にあった。
証拠もある。
凶器だって残されていた。
明らかな理不尽な暴挙。
死刑判決も免れぬ犯行動機。
俺は、昨日配属されたばかりの新人刑事、加藤良弘(よしひろ)。
このカニバリズム事件(仮)を探る調査員は、
誰も知らない迷宮を歩こうとしていた。
To be continued...
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