ケーキにろうそくさすのって
いつからやってないんだろう
ふと思い立って
一人買いに走る寒空の下

多忙にかまけて色々忘れ
そんな自分でも今日くらいはご褒美をと
誰にとも無く言い訳し
奮発して大き目のそれを

あれ？
でも一人で食べきれるのかな？
そうだ、誘ってみよう
今日なら、頷いてくれそう
今日なら、伝えられそう

ハッピーバースディ
笑って、唄うように言ってくれたら
僕は幸せすぎて溶けちゃうよ
ハッピーバースディ
そんな僕を優しく抱きしめて
…なんて、過ぎたプレゼントかな

少し浮かれる帰り道
彼女に連絡も取ったし
あとは一緒に
このケーキを食べるだけ

妥協を招いて色々捨てて
馬鹿ばかりな自分でも今日くらいは許してと
君にこっそり言い訳し
想いをはせてみたりする

あれ？
でも今日用事あるとか言ってなかった？
それなのに「いいよ」だなんて
期待しちゃってもいいのかな

ハッピーバースディ
家のドアを開ければ
少し照れたような君の顔
ハッピーバースディ
そんな君だから好きになったんだ
…なんて、言っちゃってもいいかな？

期待を裏切らない人ねと
君はケーキを見て笑う
少し溶けてやわらかくなったそれに
ろうそくをさそうか

ハッピーバースディ
笑顔の君に見とれてる
差し出された手のひらの上
ラッピングされた箱
震える指で包みを開ける
小さな、銀色のリング
一瞬判らなくてフリーズ
ハッピーバースディ
服を握ってくる左手
薬指には同じ指輪
ああ　どうしよう
僕は幸せすぎて泣いちゃうよ
…こんな僕だけど、よろしくね？