"CALL ME QUEEN"のPV撮影も無事終了し、戻ってきたミク。
居間のソファーに腰を下ろすと、早速傍にいたリンレンが今日の仕事について尋ねてきた。

「あ、ミク姉お疲れー。
 ねえねえ、今日のお仕事どうだった?」
「う、うーん……。
 ドレス着れたのは嬉しかったけど、やっぱりちょっと恥ずかしかったかも……。
 (2番はちょっと気持ち良かったけど)」
「ドレスかぁ……いいなあ~。
 あー、あたしもドレス着てみたーい!
 ねえねえミク姉、こんどあーいう仕事きたらあたしに廻して、お願いっ!」

マスター達の指示無しにそのような事ができるはずもないのだが、余程ミクのドレス姿が
羨ましかったのだろう。
何とかしてその機会を得ようとせがむリン。が、その勢いに気圧され返答に困っているミクを
見かねたのか、はたまた単にその内容に呆れたのか、横にいたレンがリンを諭しに入る。

「おいおい、あんまり無茶言うなって。
 ミク姉に言ったってマスターがOKしなきゃどうしようもないだろ。
 それに、ドレスだったらお前だって着たことあるじゃん、『悪の』シリーズでさ」

「うー、それはそうだけどさぁ。
 あのシリーズ、あたし思いっきり悪役なんだもん」

「そんなこといったらオレなんて、最後身代わりで処刑されちまうんだぜ?
 話戻すけど、まあ今回の場合だと、やっぱお前にゃ荷が重過ぎだと思うぞ。
 ……正直、ミク姉もちょいと違和感あったしな」

「なんであたしじゃ無理なの!? ワケ言ってみなさいよ!」
「…!」

呆れたようなレンの台詞に、マスター云々の部分はともかく後半の部分が気に触ったのだろう。
頬をぷうと膨らませて反発するリン。
ミクもまた『違和感あり』といわれたことに対し、口にこそ出さないものの抗議の視線を向ける。

「……お前が理由言えっつったんだからな、後悔すんなよ?
 その理由はズバリ『色気が足りない』」
「う゛っ!」
「はうっ!?」

「リン、お前じゃ1番はともかく、2番の部分はミク姉以上に違和感ありまくりだ。
 まあ2番限定なら、絵的に一番ふさわしかったのはハクさんだな。
 眼が妖艶だったし、胸デカいし」
「あうう~(涙)」
「……(涙)」

短いながらも的確かつ致命的な一言、さらには持つものと持たざるものの絶対的な差を
これでもかと突き付けられ、額に縦線を浮かべてどよ~んと落ち込む二人。
俯き加減で自分の胸に手を当て、小声でブツブツと呟く二人にそこはかとなく罪悪感と恐怖を
感じたレンは、慌てて話題を切り替える。

「ま、まあ二人ともそんな気にするなって。今回についてはメイ姉っていう
 最悪の事態は回避できたんだしさ」
「へ?」
「? どういう事?」
「いやだってさ、想像してみてよ。2番の部分のメイ姉の姿を。
 ドSな女王様、そのまんまじゃん」

「……(汗)……ぷっ」
「……(汗)……くっ」

「ぷっ……くくく、あはははっ、く、くるひい、ぷぷっ。
 女王様って、まんま、ひはははっ」
「リ、リンちゃん、わ、笑っちゃ、ダメ、あはは、だってばっ、はははっ」
「や、やべえ。自分で言っときながら、メイ姉がやったの、想像すると、マジで、ツボに、
 入って来ちまうっ。うはははっ。
 黒ビスチェにガーターベルト、ハイヒールにムチとロウソクで、ぶはははははははっ」
「「……あ」」

ひとしきり笑った後、目の前の二人を見ると、二人とも先程から口を閉ざしているのに気付いた。
二人の視線はレンの頭上に釘付けされ、額に大きな汗マークを貼り付けて乾いた笑いを
こちらに投げかけている。

「なかなか面白そうな話をしてるわねえ。
 で、だ・れ・がドSな女王様なのかしら?」

首関節をギギギと軋ませつつ振り向いたレンの眼前には、にこやかな笑顔を湛えた長女の姿が。
だが、その相貌に獲物を狩る猛禽のごとく獰猛な眼光を宿し、さらに
全身からドス黒いオーラを噴出している彼女を前にして、レンは全身から
オイルの気が引いていくのを感じていた。

「い、いや、オレ達はただメイ姉が今回の仕事に(ある意味)適任だったって事を…なあ。
 って、二人ともいねえ!?」

振り返ったレンの視線の先にあるものは、ソファーに座った二人の姿ではなく、
一心不乱にネギを振り続けるぬいぐるみと、ラジコンロードローラーの姿だった。

「……(汗)」

ALERTとかDANGERといった文字が猛烈な勢いで点滅しているのを視界の端に捕らえつつ
レンはこれまでメモリーに蓄えた映像情報が脳内に展開されるのを感じ取りっていた。

(ああ、これが走馬灯ってやつか…オレ達って精巧にできてるんだなああはははははは)

メイコはレンの肩に手を置き、CPU暴走で明後日の方向に行きかけていた彼の自我を
無理矢理こちらに引き戻すと、女神のような笑顔に絶対零度の視線を乗せて呼びかける。

「さあ、レンく~ん。お姉さんとイイことしましょうね~♪」

「い、いや、オレ、ちょっと用事ができちゃってさ、はははっ」

決死の努力を持って、ソファーから立ち上がろうとするレン。
しかし、がっしりと彼の肩を掴んだメイコの手はその行動を完璧に封じ込める事に成功していた。

「ん~? 後でいいじゃないの、そんな事は。
 ゆっくりじっくり、手取り足取り教えてあげるからね~♪」

最後の抵抗も虚しく、ズルズルと引きずられてゆくレンの姿。

その後、数十分に渡ってレンの絶叫が響き渡り、そして静かになった……。




-*-*-*-*-*-*-*- 一方その頃 -*-*-*-*-*-*-*-

「ああっ、逃げないで下さいネル様~。
 お願いですからもっともっとしばいて、罵ってください~~~」

「いい加減にあっちいけーーーーーーーっ!! この馬鹿マフラー!!
 アタシはノーマルなのっ! そっちの趣味はないんだからっ!!」

どげしっ!!

「ああ…、イイですネル様…(うっとり)」

「ぎゃああああーーーーーーーーっ! 寄るな、触るな、このド変態!!」

「(;´Д`)ハァハァ、もっと踏んでください~」

「足を掴むなああっ!! 時給安いし、ハクはどっかいっちゃうし、
 もうこんなバイトいやあああああああああああああああっ(泣)!!」


END

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【小説】After of "CALL ME QUEEN"【二次創作・ギャグ系】

本作は、DeeDee(両国忍者P)様の作製された楽曲「CALL ME QUEEN」を
題材にした創作小説(ギャグ系)です。
 
元の作品はこちら:http://piapro.jp/content/dvu6ymdeafik9o2y

2008/11/25 改訂
・タイトルに【二次創作・ギャグ系】を付加
・各キャラの台詞を台本形式から変更
・文章の加筆修正

閲覧数:496

投稿日:2008/11/25 19:28:41

文字数:2,606文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • RAYXANBER

    RAYXANBER

    ご意見・ご感想

    >杏仁豆腐さん

    感想ありがとうございます。
    各キャラの口調などについては自分の中でイメージができていたのでさほど苦労しなかったのですが、
    キャラの書き分けが上手くできなかった(ミクとリンの区別がしづらい)ので、仕方なく台詞の頭にキャラ名を
    入れる台本方式にしました。

    拙い文章ではありますが、あの動画がなければこの小説が出来ることもなかったと思いますので、
    楽しんでいただけたならば幸いです。

    2008/07/24 22:48:27

  • 九神杏仁

    九神杏仁

    ご意見・ご感想

    はじめまして。
    ボカロキャラ達がいい味だしてますね。個人的にはこのネルがかわいくて好きです。
    動画に出せなかったリン レン MEIKOもいい味でてますね。
    さすがに全員出すと「自分が」かなり大変なことになりそうだったので今回は断念したのですが
    小説の方で出してもらえてよかったです。

    2008/07/23 07:33:40

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