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  「 はぁあああっ。」

 世にも切なげなため息をつきながら、
移調 珀世( はくよ )は、悩んでいた。
ヘタウマな曲が、
なぜか、世間の底辺の共感を呼ぶと話題になり、
弱音ハクの芸名で、そこそこ稼いでる彼女にも、
悩みはそりゃああるが、ここのところのスランプは、
底なしのブラックホール状態だった。
悩みを突き抜けて、鬱の領域に達している。
旦那の徹は、USAのアポロ・シアターで、
新人歌手のプロモートに忙殺され、電話にも出てくれない。
息子は、息子で、昨日の夜、
街に機材一式持っていったまま、戻ってこない。
愛飲のスピルタスを飲みながら。管を巻いていると、
玄関のチャイムが鳴った。

「 ただいまぁ。」

 と、聞き慣れた少年の声がしたので、
玄関に迎えにいくが、続いた声に足をとめた。

    「 ここが、マスターのお家ですか? 」

    「 にゃあ♪ 」

    「 唱太?!どうしたの? その娘? 」

珀世ママは、
ストリートミュージックから帰ってきた息子の
彼女らしい少女を見て理由を尋ねてみる。
唱太は、いや、そのと慌てている様子。

「 マスターのお母様ですか? 」

「 マスター? 」

 彼女なら彼氏に対して、そんな呼び方はしない、
ジト目になって、珀世ママはミクを凝視した。
唱太は、なにか、冷や汗などかいている。
ミクは、興味深げに珀世ママを見ると、
ぺこりとおじぎをした。
意表をつかれて、
慌てて、笑いかえしてしまう。

「 よろしく、お願いします!お母様! 」

「 ええ、こ、こちらこそ、よろしくね…。」

挨拶をかえしながら、
ちょっとと、唱太の耳をひっぱりながら、彼に詰問する。
耳をつねられて、いたたたたっといいながら、
唱太は奥まで引っ張られて、母親に声をひそめて尋ねられる。
完全に疑いの目だ…。

「 彼女、何者なの?
  唱ちゃんのいいヒトって感じでもなさそうだし… 」

 困った、本当のことを言うとアレだと思われるだろう。
どうしたものか…。

「 ええと、その…。 」

「 どうしたの?もしかして、
      どっかから、ラチって来たとか… 」

「 んなわきゃないだろ!
       空から落ちてきたんだって!」

はっとして、母をみると、
せつない生き物を哀れむかのような目で唱太をみつめ、
彼の額に手の甲をあてながら、ぽつりとつぶやいた。

「 ツマンネ冗談言ってるし… 」

「 はあ?ツマンネのは、
     ダメダメ歌手のお袋のほうだろう! 」

    「 私のはいいのよ!あれは、ほめ言葉なの! 」

 涙目で、珀世はどなると、
持っていた酒瓶で、唱太の頭をぶんなぐった。
いてえなというと、唱太は珀世をどつきまくる。
こうして、どたんばたんと、親子ゲンカがはじまった。
もう、小一時間も、不毛な言い争いは続いている、
ミクは、おろおろと状況を見守り、名案を思いついた。

《つづく》

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

伝説歌神 あんじぇの~と・・・ハク編 【改定版】

第 7 話 ;弱音ハクの憂鬱

・珀世ママ登場です。

キャスト:
移調 唱太(いちょう しょうた)>本編、主人公。
いつも、町にでてストリートミュージックをやって
いる。神奏日本から、現代日本に事故でやってきた
ミクのマスターになりゆきでなってしまうことに。
さて、次の敵は?

ミク>正式名は、"Mind Index Keening Unison
for Human with Android Trouble Shooter and  Ultimate Noise Emulator"。略称、MIKU HATSUNE。
神奏日本の科樂庁で、秘密裏に作られた精神感応型
の究極の楽器にして、精神追随式対防衛戦術型音響兵器の
10005番目の機体。性格は、素直で優しく、天然ボケ
デフォルトで、思考トレース機能がついている。
型番はAPA_010005:MIKUHATSUNE。

移調 珀世(いちょう はくよ)>主人公の母親。
この物語上では、芸名、弱音ハク名義で、
活躍しているシンガーソングライター。
壊滅的スランプ状態で、最近、うつ気味。

ぬこ>ミクいわく、歌の上手いぬこ。
   

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投稿日:2008/11/16 20:06:08

文字数:1,277文字

カテゴリ:小説

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