S0
崩れる生命徴候(vital sign)
この夜を蹴散らして

A1
不意の覚醒
不機嫌な赤橙が小部屋を染め上げ私を呼ぶの

B1
鳴り響くPHSに
白衣を羽織って行くわ
飲み干したミルクティーは冷めきって

S1
俄かに開く救急搬入口(rear gate)
呻く臨死の患者(patient)
廻る声と機械の不協和音(discord)
連れて逝かせないぜ
血潮に塗れて

A2
夜半の戦場
自己心拍再開(ROSC)まで勝ち取って
空虚な平穏　抱きしめた

B2
無機質な硬いベッドに体を放り投げた
沈みゆく意識の奥で聞こえる

C
助けてと呼んでいる
私のずっと近くで
人の声に応えるたびに消えてゆく

私だって救われたいと願っていいでしょう？

S2
生命を巡って更ける夜には
そんな幻聴たちが囁くものよ
心地よい絶望に癒され眠るの

S3
夜を裂く回転灯(rumble sign)
響く警報音(Siren)
大嫌いな電子の英雄曲(polonaise)
悪夢より鮮烈(vivid)な現実(the real)が今

崩れる生命徴候(vital sign)
揺れる心拍(heartrate)
描く幾何の病理形態像(histopathology)
連れて逝かせないぜ
さあこの夜を蹴散らして


(かな)

S0
くずれる　バイタルサイン
この　よるを　けちらして

A1
ふいの　かくせい
ふきげんな　せきとうが　こべやを　そめあげ　わたしを　よぶの

B1
なりひびく　ピーエイチエスに
はくいを　はおって　いくわ
のみほした　ミルクティーは　さめきって

S1
にわかに　ひらく　リアゲート
うめく　ペイシェント
まわる　こえと　きかいの　ディスコード
つれて　いかせないぜ
ちしおに　まみれて

A2
よわの　せんじょう
ロスクまで　かちとって
くうきょな　へいおん　だきしめた

B2
むきしつな　かたい　ベッドに　からだを　ほうりなげた
しずみゆく　いしきの　おくで　きこえる

C
たすけて　と　よんでいる
わたしの　ずっと　ちかくで
ひとの　こえに　こたえる　たびに　きえてゆく

わたし　だって　すくわれたいと　ねがって　いい　でしょう？

S2(ゆっくり)
いのちを　めぐって　ふける　よるには
そんな　げんちょうたちが　ささやく　ものよ
ここちよい　ぜつぼうに　いやされ　ねむるの

S3(ラスサビ)
よを　さく　ランブルサイン
ひびく　セイレーン
だいきらいな　でんしの　ポロネーズ
あくむより　ビビッドな　リアルが　いま

くずれる　バイタルサイン
ゆれる　ハートレート
えがく　きかの　ヒストパソロジー
つれて　いかせないぜ
さあ　この　よるを　けちらして