♯20 【エピローグ】

 ちゃんと、綺麗にバイバイしようって最初から決めてた。

 来た電車にレンが乗ってて、なんとなくわかった。

 “幽霊列車は死者の魂を乗せる列車”だということ。

 幽霊でも、生前のレンとは変わらなかった。
私のことは覚えてないみたいだったけど。

 それでも嬉しかった。

 『一緒に来てくれないか』と言われて、一瞬行ってしまおうかと思った。
でも、現実は残酷で、私は生きている。

 綺麗にバイバイしようって、決めてたのに。
結局、私が泣いてしまって「ありがとう」すら言えなかった。

 今私の座っている座席の向かいに、レンはいない。

 いない。

 あれが最期のお別れだった。

 後悔ばっかり、頭の中を舞う。

 そんなことしてる間に、電車は駅に着いた。
もう夜も遅いみたいだし、私は降りることにした。

 時計を見ると、午前1時をちょっと過ぎた頃。

 電車の中で見たような違和感はない。

 “現実世界”だ。

 レンは、私の片割れ。
私の半分以上はレンの存在で成り立っていたのに。

 私がサンダルを、波に持って行かれたりするから。
だから、レンは死んだのに。

 レンが死んだとき、お葬式、そしてさっき、枯れたと思った涙はやっぱり止まってくれない。

 「レン……。」

 「何?」
なんて返事はかえってきやしない。

 もういないんだもん。

 いつまで経っても、君から離れられない。

 
 月はちょっと欠けている。

 空も、星が綺麗と言えるほど晴れていない。

 何も音がしない。


 ―――ザア…
と、風が木々を揺らす。

 私の髪もそれにつられてなびいている。


 もう、いっそここで誰にも見られないで、レンに会いに行こうか。

 そう思った時だった。

 ――――…き……

 何かが頭の中で響く。

 「…誰……?」

 それでも、響き続ける。

 私はそれへの問いかけをやめて音に耳を澄ましてみた。

 ――――……て…

聞き覚えのある声。
 
 ――――い…て…

よく知っている、大事な人の声。

 
 ―――――――…生きて……


 レンの声。


 私は、また流れ出す涙をぬぐい、歩き出す。

 帰ろう。
君との思い出がいっぱいある我が家に。


 レンは、私の中でなんて生きていない。

 レンは死んだ。

 でも、これだけは言えるよ。
約束する。


 私は、ちょっと欠けた月に微笑んだ。






 「…生涯、忘れないよ……。」




 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

幽霊列車

ありがとうございました。

閲覧数:110

投稿日:2012/06/16 11:10:04

文字数:1,065文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    忘れない

    それは人間にとって、とても難しいこと
    でも、それができるのも人間の素晴らしいこと

    忘れなければ、レンにまた会えるかもねww

    2012/06/24 02:25:45

    • イズミ草

      イズミ草

      「人間、忘れる生き物だ」なんて聞いたことがありますが
      絶対、映像も声も表情も、鮮明に覚えてる何かって
      あると思います。

      私はまだそれを見つけられていませんが…。w

      2012/06/24 12:38:38

  • つーにゃん

    つーにゃん

    ご意見・ご感想

    こんにちは、椿姫です。
    リンちゃん、泣くな!
    ――――…き……ってところ、あるじゃないですか、
    それで、次読んだら、――――……て…ってあるじゃないですか。
    私、始めは、来てだと思ってましたwww
    きて?→来て?→どこに?→レンの居るところに?→レン、リンちゃん生かしたれよ!
    だと思いましたwww

    話が変わりますが、職業体験に9月に、行くのですが、昨日決まりました!
    図書館www
    や、私、図書館って希望書いてませんでした…
    こういう事になるんだったら、第一希望幼稚園って書けばよかったな~(卒園した所の)
    ちなみに卒園した所、私立のキリスト教のお嬢様幼稚園でしたwww
    長々と、グチ的なもの書いてすみませんでしたm(_ _)m

    2012/06/16 15:18:07

    • イズミ草

      イズミ草

      ―――…生きて…
      でしたねww

      1か月とちょっとの短い期間で完結しましたが、どうでしたか??

      ありがとうございました!!

      2012/06/16 18:47:24

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