読み終えた本を閉じる。
私・・・兎眠りおんは本を買った当日に読み終えないと気がすまない性質で、どれだけ時間が経ってもほとんど何もせず読破してしまう。
要は「本の虫」だ。もっと言うと寄生虫かしら。

今日買ってきたのは勇者魔王モノで、勇者が姫を救って魔王を倒すというなんともありきたりな話だった。
・・・ただ、魔王生きてたけど。結局撲滅してないけど。
今の時間は午前1時。明日も学校があるから早く寝なければ。
私はシャワーを浴びてから布団に潜った。
起きたら世界が変わっていることも知らずに・・・。




「・・・・・・様、姫様!!」
そんな声がして目が覚めた。時計の針は2本とも6の近くにある。
「あああああ!!学校行かなきゃ!!」
「ひ、姫様?何を仰られているのですか?」
私が起き上がるとそこには、自分の部屋の何倍もあるだろう空間が広がっていた。
近くには赤い髪を後ろで束ねた女の子もいる。え?
意味が分からないんだけど・・・。

『ねえ、貴女!』

突然、頭の中で凛々しい女性の声がした。
「え?何?ここ何処!?」
「姫様落ち着いてください!ここは姫様の自室でございますよ!」
『とりあえず、心配させて悪かったわねって言っておきなさい』
私が混乱してると赤毛の女の子が私の背中をさすりながら言い、頭の中からも声が聞こえた。
頭の中では確か・・・。
「し、心配させて悪かったわね」
「姫様・・・大丈夫でしょうか。妹姫であるルカ王女が攫われてまだ一晩しか経っておりませんものね・・・」
私が内心慌てながら応答したら、赤毛の女の子はまたワケの分からないことをいい始めた。
妹姫って何!?てかホントここどこよ!?
『・・・詳しくは後で説明するから、その子を部屋から出して頂戴』
慌てる脳内では、その天の声も断片的にしか聞こえなかったけど、とりあえず適当なことを言って赤毛の女の子を退出させた。



『で、貴女誰なの?』
私が落ち着いた所で脳内の女性が話しかけてきた。聞きたいのはこっちの方だ。
「・・・あなたこそ誰なんですか?」
『私はメイコ。エールキア国の第一王女よ・・・この身体の主でもある』
・・・ツッコミしてもいい?
まずエールキアって何処よ!あと身体の主って!?
そう思い鏡の方へ向かうと、別人がいた。
髪は栗色のボブカットで、目も同色をしている。豊潤な胸を強調させんばかりに胸元が開いたネグリジェを着ていた。
「誰これっ!?」
『それが私・・・メイコ=クリプト=エールキアの姿よ』
・・・なんかいろいろ負けた感ある。惨敗です。
あとドサクサに紛れて本名言いましたよね!?しかも長いし!
『で?貴女は誰なの?』
自分の身体との違いでがっくりしていた所にメイコさんの質問が入った。
「・・・私は、兎眠りおんです」
『身分は?』
は?
『だから、身分は?って聞いてるの・・・兎眠っていうのが苗字なら、貴族よね?』
はい?
私の記憶が正しければ日本に身分制度はたしか無いはずだけど・・・。
「私に身分はありません・・・さしずめ庶民と言ったところかな」
『身分がない!?・・・そういえば東にある島国では王国制ではないと聞いた事があるわね・・・』
「そこが多分私の祖国です」
島国はそんな多くないはず・・・だしね。


『・・・ということで、ルカは昨日、魔王に攫われちゃったのよ』
なんだそのファンタジー!?
私はメイコさんの話を聞いててそう思わずには居られなかった。
『貴女、伝記を読まないの?』
「伝記を読んでもこんな物語は一切出てきません」
『・・・勇者物語も?』
「それはフィクションとしてですか?」
『ノンフィクションとして』
「見たことありません」
どうやらこの世界はパラレルワールドのようだ。
メイコさんからしてみれば私の住んでる世界がパラレルワールドかもしれないけど。
『ふーん・・・まあいいわ。どうやら今は貴女に身体を動かす権限があるようだし、今から言うことを覚えなさい』
え?覚えるって!?
『貴女に拒否権はないわよ。貴女には私に代わってこの国の第一王女になってもらうんだから・・・』
そうして、私はメイコさんの喋り方やらなんやらをびっちし叩き込まれたのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【勇者魔王】第一章 ファンタジーに吸い込まれたら

マイページではお久しぶりなすぅです!
私ね、本に影響されやすいんですよ。
で、これも案の定とある本を読んで思いついたんですw
勇者魔王言ってるけどどっちもまだ出てきてません。
第二章でね、パーティ紹介はしますんで。はい。
あとノマCP結構出てくるよ!

閲覧数:108

投稿日:2013/12/30 20:39:55

文字数:1,742文字

カテゴリ:小説

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