注意:オリジナルのマスターが出張っています。
カイメイ風味です。
以上を不快に感じられる方は閲覧を避けて下さいませ。
「…これはまた、すごい」
「わあーっ、これ着ていいのっ?!」
「彩り豊かですね」
「着付けはしてあげるから、好きなの選びなさいな」
「メイコ、着付けも出来るのか」
「浴衣くらいなら一応ね」
居間に広げられたのは、結構な数の浴衣だった。メイ姉はカイ兄と一緒にコレを取りに行っていたらしい。
「何でこんなに女物の浴衣が大量にあるんだ…?」
「マスターが貰う一方で、溜まっていったんですよね?」
「使わなくなった、っていう人から貰ったものばかりなんだけどね」
「捨て切れなかったんだな…」
「言ってしまえばそうだね。まあでも、こうして役に立っているんだし」
横で男たちがなにやら会話してるけど、無視無視っ。
「わぁ、これ可愛いっ」
あたしが気に入ったのはピンク地で大きな花柄がついてる浴衣。思わず自分にあてがってみる。
「ええ、リンに似合っていますね」
「ミクにはこれが良いんじゃないか?」
あたしを褒めてくれたミク姉にルカ姉が勧めたのは、薄い青の地に繊細な朝顔が咲いている浴衣。
ミク姉の緑の髪と白い肌に似合いそうだなあ。深窓のお嬢様、って感じ?
「うん、そうね。それが似合うと思うわよ」
「んじゃ、ルカ姉はコレとかどーよっ」
ルカ姉へのあたしのオススメは、紺色に白い線で幾何学模様が描かれた浴衣。
ルカ姉は髪の毛が長くて淡い色で綺麗だから、それを生かすためにもぜひ濃い色でっ。
「…私も着るのか?」
「安心なさい、ちゃんと着せてあげるから。それもお祭りの一環よ」
「ふむ…」
「ルカは嫌なんですか?」
「いや、さすがに初めてだから、どうしたものかと思っただけだ」
「じゃあメイ姉はコレかなあ?」
メイ姉には赤地に白で花火の柄が描いてある浴衣を勧めてみる。オトナの女性って感じで良いと思うの。
「って、私も着るの?」
「お姉ちゃん。お祭りの一環だってルカに言ったばかりじゃないですか」
「いやでも…」
何だか落ち着かなさそうにちらっと男性陣の方に目をやるメイ姉。その目線に一番に気付いたカイ兄がにっこりと笑う。
「MEIKOさんの浴衣姿、見たいなあ」
「何であんたの望みを叶えなきゃいけないのよ?」
「せっかくのお祭りなんだし、メイ姉も着た方がいいんじゃね?」
「レンまで、何言ってるの」
「何なら着付けてあげるよ?」
「ちょっとマスターっ?!」
「それはダメですっ!」
マスターの発言に対して、顔を赤らめたメイ姉と慌てたカイ兄の言葉はほとんど同時だった。
「って、何であんたが慌ててんのよ?」
「いやだって、マスターにさせるくらいなら僕が…」
「っ、なんてこと言い出すのよこの莫迦っ!」
「だってマスターだって男性だし…」
「あんただって男でしょうがっ」
何かいつもの展開。ほにゃほにゃしてるカイ兄に怒るメイ姉は日常の光景なんだよね。何で怒ってるのか良く分かんないけど。
ミク姉は苦笑、ルカ姉は呆れたような顔、レンはため息、で、マスターはくすくす笑っている。
「ったくもうっ。とりあえずっ、選んだ浴衣は出しておきなさいねっ」
「折角ですから、全部影干ししておきましょうか」
「ああ、そうね。…でも、この量は大変じゃない?」
「勿体無いですよ。折角あるんですから、大事にしてあげたいじゃないですか」
「悪いね、ミク。…捨てられない人間で」
「いえいえ、構いませんよ。そういうマスターだからこそお世話のし甲斐があります」
ミク姉の言葉に、マスターは何だかとても嬉しそうになった。
「それじゃ、とりあえず広げた分はまとめておこっか。干すにしたってこのままにして寝るわけにはいかないし」
「ああ、そうですね」
「適当に畳めばいいのか?」
「あ、畳み方教えるわね」
「レンも手伝ってよぉ」
「え? 俺もやんのかよ?」
カイ兄の音頭で、あたしたちは広げた浴衣を片付けにかかった。
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