コンサートイベントの効果か辺りは興奮した観客の熱気に溢れていた。ステージ裏の本部に集合が掛かり、ヤクル、聖螺を除く適合者が集まっていた。忙しない空気の中、特撮の悪役よろしくな衣装の純が姿を見せた。
「…お待たせしました…。」
「うっわ、暑苦しいな~前見えてるの?それ。」
「特撮ってこんなもんじゃね?」
「いや、実際暑いです。」
「それじゃ作戦説明に入るぞー?」
銀髪の幾徒さんから大まかな地図を元に作戦の説明が始まった。
「ステージの音響と観客の声から動的エネルギーを抽出して弱性散布…まぁ
霧みたいに弱い言霊を撒いてる状況だと思ってくれれば良い。」
「観客が文字化けになったらこのエリア外へ強制転送だよね?」
「文字化けは結構アバウトに転送されるだろうから近くに居る適合者が
これの対処に当たる。幾つか撃破して行けば『幎』を誘導出来る筈だから…。」
「そのラスボスを純に詰め込んで中身ごと撃てば良いんだよな?」
「俺はゴミ袋かよ…。」
和やかなムードだけど、やっぱり心配だった。適合者でもなければ特殊訓練とか受けた訳でもない、純は至って普通の一般人…そんで心配性で、一言多くて、家事が得意で、要領悪いけど優しくて…えーと、もう良いか…。
「ねぇ、純死なないよね?」
「縁起でもない事言うなよ!コア!」
「だって純だし。」
「…どう言う意味…?」
「人体に支障無いから大丈夫だよ。」
上手く言葉に言い表せなくて俯いてしまう。駄目だなあたし…もっと純を元気付ける言葉とか言わなきゃいけないのに、これじゃ却って不安にさせちゃう。
「…シリアスな所悪いんだけどミニスカ戦闘員と魔王子の格好だからぶち壊しで
こっち笑い堪えるのに精一杯だぞお前等。」
「幾徒さん、ちょっと黙ってて!」
「そうだよ!今大事な所!ほらほら純さん!ここは『大丈夫だよ!』とかキメて
勢いでぶちゅっと!」
「ぶ、ぶちゅっと?!」
特撮の格好でちっちゃく喧嘩してる純に、何だか自然と顔が綻んだ。もうあの時みたいに苦しんでない、傷付けたりしない、傷付いたりしない、死にたいって、殺してくれって言わないんだね…。あたし…純を助ける事が出来るって思って良いのかな…?
「純。」
「え?…んぅっ?!」
「わぉ。」
「あたし頑張るね。」
「………………………。」
「わぁ?!純さん?!」
「赤面したまま気絶してる…。」
…良いのかな…?
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