「ケイ、ミライ、お待たせー!」
明るいミクの声が、広場中に響く。それと同時に、オレたちの目の前にあった、一段高い台座のような場所がライトで照らされた。ライトは……オレ達の後ろにそびえ立つビルから照らしているようだった。
「ラー……ラララー♪」
透き通るような綺麗な声が響いた。何という声だろう……聴いていて、凄く心が落ち着く……心が、綺麗になっていくような感じだ。
オレ達の右手のビルに、ライトが行く。
ミクが……立っていた。その光の中に、ミクは悠然と立っていた。
その姿は……何と言ったら良いのだろうか? その表情は儚げに見えた。しかし確固たる意志をその瞳は秘めていて、その表情の印象とは違って何と力強い佇まいなのだろう。
儚いけれど、それは弱さではない。その瞳に込められた意志は強い。だがそれは他人を遠ざけるものでは決してない。彼女を取り巻く全てを包み込むような優しさも内包した強さとでも言うのだろうか……。
上手く言葉に出来ないが、とにかくオレの目に映ったミクは綺麗で……神秘的だった。
「ラララー……ラー♪」
ミクは目を閉じて、胸に手を当てて歩いてゆく。ライトも、そんな彼女を追って動いてゆく。
不思議だった。
彼女の発する言葉はたった一言なのに、その音はなんて表情が豊かなのだろう。「ラ」という一言に乗せて、音程が目まぐるしく変わる。しかしそれは不快ではなく、オレの心を優しく撫でてくれるような心地よさを伴ってくる。
そうだ、心地良いんだ。ミクの声を聴くと、オレの体が鎮まる。さっきまで感じていた苛立ちも、嘘のように引いてゆく。最初から、そんな感情のササクレなんかなかったかのように。
「ラララーラー……ララララー♪」
いつの間にかミクは、オレ達の前に来ていた。一段高いあの台座の中央に立っていた。
ライトに照らされるミク。月明かりが背後にある泉を揺らし、満天の星空が彼女を祝福するかのように瞬いている。
美しかった……。
ミクの透き通るような声が、オレの……オレの何かを揺さぶる。鳥肌が立っているのか……? 何か、背筋がゾクゾクと来ていた。
何なんだ、この感じは……。
「ラララー……ラー♪」
声が高くなって、盛り上がっていった。そしてミクがオレ達に手を伸ばすように広げると、一際高くて大きな声を出して……その声はどこまでも伸びるかのように長かった。ミクの声はとても澄んでいて、その長く響く声はオレの心を揺さぶった。
やがてミクの声が最高潮へ達し、その余韻を残すかのように綺麗に引いていった。
な、何なんだこの感じは……。凄く……震えた。体が、心が、何と言った良いのだろうか……とにかく感動した。
これが……歌なのか?
歌い終わったミクは、その余韻を逃さないかのように自分の体を抱きしめた。その姿は、綺麗だ。そして、ちょっと官能的だった。どうしようもないくらい、オレはドキドキしていた。
「……どうだった? 私の歌声」
歌い終えたミクは、ライトの中で微笑んでいた。何て言うか……凄く充実しているって顔だ。やっぱりミクはボーカロイドなんだな。歌うことが、凄く嬉しかったって顔をしている。今まで見たミクの顔の中で、一番生き生きしていた。そんなミクを見ていると、オレも何だか嬉しくなってきた。
「凄ぇ……凄ぇよ、ミク。オレ、何かよくわからないが……感動した!」
そんなオレに同調するかのように、さっきまで一緒に落ち込んでいたミライも、その短い手をバンバン叩きながらミクを褒め称えていた。
「これが“歌”なのか……。ビックリした。こんなに心が揺さぶられるような感覚……初めてだ」
「うふふ、甘いわよ、ケイ。これはただのウォームアップなんだから。これから本番よ!」
ミクは不敵な笑みを浮かべて、高らかに宣言した。
こ、これでウォームアップなのか……?
これから、いったいどんな凄いことが始まるって言うんだ……。
いやが上にも、オレの期待は高まった。柄にもなく胸がときめいている。恥ずかしいが……でも、そんな事はどうでも良いくらいに気分が高揚していた。
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MVライフ
廃墟の国のアリス
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BPM=156
作詞作編曲:まふまふ
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曇天を揺らす警鐘(ケイショウ)と拡声器
ざらついた共感覚
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まふまふ
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次の二人は 街の隙間で...コノハの世界事情 歌詞
じん
【ゆるふわ終末論者】
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