磁石には極がある。
SとNの極。
これは、前から決められていた事で。
変えられる訳が無かった。



――magnet――



例えば、翠の髪。
ふわふわで長くて、尻尾みたいなツインテェル。
例えば、碧い瞳。
くるくるとよく回る、艶やかな翡翠石のよう。

全てが愛おしくて。
気付いた時には、貴女の姿を追いかけていた。

「――ルカちゃん!」

貴女の言葉で、あたしは意識を呼び戻された。
少しだけ吃驚しながらも、冷静であろうと努力してみる。
頬杖をついて、ちょっと流し目をしてみたり。

「――何?ミク」

ミクは四つ年下の従姉妹だ。現在高校一年生。
にしては、幼い容姿なのだと思う。
サイズ的にまだ緩そうな、この春買った高校のブレザー。
赤いリボンが、よく似合っていた。
あたしはその頃アメリカに居て、私服制の学校だったから、ブレザーと云うものがちょっぴり憧れだったりする。

「如何かしたの?なんか、ぼーっとしてたみたいだけど……」
「そう?あたし、そんな間抜けた顔してたの?」

あたしが何気なく言ってみると、ミクは慌てて、ふるふると首を振る。

「ちっ、違うの!ただ、あの、その……」

ミクは俯いて、顔をほんのり朱く染めながらもじもじと続きを言おうと努める。

「ルカちゃん……なんか、遠くを見つめてたみたいで……その、綺麗だなって、思ったんだけ、ど……」

ミク、それは違う。
あたしは、遠くなんて見てなかった。

あたしが見てたのは――

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  • 非営利目的に限ります

引き寄せる、想い。【magnet 考察小説】

閲覧数:1,282

投稿日:2009/10/04 10:15:59

文字数:627文字

カテゴリ:小説

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