＃１「私とアイツとあの子」



校舎3階にある部室から見える外の景色は、遠くの紅葉している山が夕日と相まって、さらに紅くなっている

まだ五時にもなっていないというのに、日が暮れるのは早いもんだ

そして、ふと視線を落とすと、下をアイツが歩いている

高校生にもなっても、アイツは部活の一つもしていない

……まぁ、私も似たようなものだが


「……ん？………ちゃん？…………リンちゃん！」

「え？あ、なに？」

「もう！私の話、きいててくれた？」


私の目の前で、ぷーっと膨れているボブカットの女の子は同じ部活で親友のグミ


「いや、まったく……」

「もう！また最初からじゃない……」


膨れる彼女を見ながら、私は大きなリボンのついたカチューシャを外し、髪を整える

短めの髪だと、こういうのが楽でいい

私はささっとなおして、カチューシャをのせる


「んで？何の話？」


私が聞く体勢に入ると、グミは話し始めた

彼女は勉強もできるし、なんでも気が利く、それに私と違ってスタイルもいい

彼女本人は気付いてないかもしれないが、周りの男子たちは彼女狙いのやつも多いみたい

まぁ……確かに私からみても、かなりうらやましいし、かわいいと思う

でも、彼女が好きなのは……


「んと、かいつまんで説明するね。また新作できたんだけどさ」

「え？また！？どんなペースよ、グミ……」


その根性……というか、純粋さは、呆れるほどにすごいな

私たちの部活は、【被服部(ひふくぶ)】

マフラーやビーズアクセなんかをちまちま作ったり、コスプレの服を作ったりする

手芸部ともいうかもしれない

と、いっても、私とグミの二人しか部員がいない

そのため、同好会と同意なのだが、名前だけは被服【部】となっている

さらに私は……ほとんど何もしない

同好会であっても最低部員が二人必要で親友の頼みだということもあって、数合わせで入っているに過ぎない


「で……その……またレン君に……着てもらいたいなって」


顔を赤らめて、もじもじとするグミ


「……はぁ。まったく……アイツのどこがいいんだか」


レンというのは……私の双子の兄

さっき、窓の下をのんきに帰っていた、アイツだ

そして、グミは、アイツのことが好きなのだ


「あのさ……グミ、悪いんだけど私、アイツにあんまり借りをつくりたくないんだけど？」

「そこをなんとか！この服、男の子が着るやつなの！だから、男の子のサイズで調整しないといけなくて！」


とかなんとか言っているが……結局は、アイツと会いたいだけ

私とグミは同じクラスだが、アイツはまた他のクラス

それにグミは極度の恥ずかしがり屋なので、私無しでは男の子と会話もできない


「おねがい」


目をキラキラさせて、私をみてくるグミ

っく……人の気も知らないで……


「……わかったよ。話すだけ話してみるよ」

「ありがとう！リンちゃん！」


私はしぶしぶ承諾した

まぁ……人を好きになるって気持ち……わからないでもないからな……