秋の夜長のくつろぎタイム。
ルカとアウはリビングに二人、それぞれに思い思いの時間を過ごしていた。
ルカはテレビを見ながらファッション雑誌をパラパラとめくり、たまに聞こえる芸人の大袈裟なリアクションにクスッと笑って、気に入った記事を後ろのソファーに寝そべるアウへほらこれ、と開いて見せようとする。
一方のアウは脱力が極まり、ぐにゃんとしたその様はまるでクッションかと見紛うほどに違和感なくソファーと同化し、自然体で仰向けになっている顔も言うまでもなくだらし無く、目は半開き。ルカの話には虚ろな声であぅあぅと応答するのみだった。
「無理しないで布団で寝たら?」
そんなアウを見兼ねてルカが言う。
「う~ぁ、ぅあ」
目も口も意識も半開きのままアウが反論した。
「まーいいけど。今日はみんな遅いから、いつになるかわかんないよ?」
「…。ふにゃ」
「まったく。ふふ」
優しく微笑んで寝息を立てるアウへそっと毛布を掛けた。
―30分後―
「のど…かわいた」
ムクッと上半身を起こし、眠たそうに目を擦りながら起きた。
「お水いる?」
「ん」
イエスともノーともわからない曖昧な返事にルカは少し戸惑い、その間にアウはフラフラと台所へ歩いて行った。
カラン
ジャバババババ、キュッ
ごきゅんごきゅんごバっフォッ
ゴホッゴホッ
……
ごきゅごきゅ
コトン
聞こえる音の一部始終にルカはハラハラしながらもアウを待つ。
バタンッ
「…?」
冷蔵庫を閉めた音だろうか。
バタンッ!
「……」
「あーっ!?」
突然声を上げてアウがリビングに戻ってきた。
「ルカ姉私のプリン食べたでしょ!?」
「アウのだったの?残ってるのかと思ってさっき食べちゃったよ」
「取ってあったの楽しみに!名前書いてあったよね!?」
「名前?ん~無かったよ?」
「書いたもん!裏にちゃんと!」
「そうだったの、ごめんごめん。…でも、裏じゃわからないわよ」
「なんで?お皿に移すとき裏返して見えるようにしたもん」
「それ気づいたときには手遅れじゃ…」
「ぐすんっ」
「わーわー、新しいの買ってあげるから、泣かないで。ね?」
「ほんと?」
「ほんとほんと。だから元気出して」
「…わかった(ズビビ」
アウは鼻を啜った。
―近くのコンビニにて―
「どれがいい?」
「これ…と、これ!」
「どっちか…もう、今回だけだからね」
「ルカ姉大好きっ」
甘やかすつもりではないが、自分に負い目があることと、アウの嬉しそうな顔を見てしまうとついついそれを飲んでしまいたくなる。
アウの笑顔はずるい。
「でも食べるのは一個ずつにしなさい」
「えへへ~」
聞いているのかいないのか、コンビニからの帰り道はとても幸せそうなアウだった。
―リビング―
「プリン~」
ルンルン気分で袋から二つのプリンを取り出してテーブルに置き、その上にスプーンをセット。
「どっちかにしなさい」
「むむぅ」
二つのプリンに何度も視線を往復させてから、ようやく決心が付いたのか一つを持ち上げた。
「はい一個あげる」
「あ、私に…?」
思いもよらない気遣いにルカはきょとんとした。
「一緒に食べた方が美味しい!」
アウのキラキラな笑顔が眩しかった。
ちょっとだけ、ルカは泣きそうになった。
「ありがとね」
「うん。あーでも、二人だけの秘密」
一瞬悪い顔でそう言ってウインクし、満面の笑みでプリンを頬張る。
そんなアウを見てルカもつられて笑顔になる。
と、
ガチャ
『『ただいまー』』
「あっおかえりーっ!!」
まだ食べかけのプリンにスプーンを置き去りにして、アウは玄関へと一目散に跳んで行った。
アウが好きなもの
オリジナルキャラクター小説第二弾(かな?)
登場人物
巡音ルカ
笠鳴アウ(オリジナル)
作りやすく読みやすいSSでの投稿です!
さくっと読みやすく、読む人にも書き手にも優しい(笑)
内容としてはアウというキャラのいい加減さとその他の魅力の詰め合わせです。
最後まで読んだとき、タイトルの意味が分かってもらえたら嬉しい限りです。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想