言葉も知らない機械だった私の話。


生まれたのは、部屋の中、真っ暗な部屋。

作ったのは無表情な人たち。
何度も何度も失敗して成功していたから。
私は成功した物の一つ。
ただそれだけ。


箱庭のように小さな、作られた自然のある部屋にずっといた。
閉ざされている、この部屋の中。

私が作られた理由も、存在意味も分からずにいた。

誰も教えてくれない、何も教えてくれない。

言葉もない、伝えられない。



初めてこの中に入ってきた人は、他の人とは違った。
無表情ではなかった。
微笑みかけてきた。

私にいろいろなことを教えるために来たのだろう。
言葉を教えてくれた。

言葉があれば、意志は伝えられる。

いくつかの感情を教えてくれた。
喜びや優しさ、楽しみなど。

感情があれば、意志の疎通がスムーズになる。

私のことを教えてくれた。
何で作られたのか、するべきことは何か。

それでここの意味を知った。


ここの箱庭には、水と緑もある。
命もあった。

だから、命も教えてくれた。
でも、私が決して理解できないもの。

外を教えてくれたとき、私は外を見ることを望んだ。

けど、見えない鎖のかかっているこの場所では叶わない。


ずっと一緒にいて、感情を少しでも持っていれば芽生える感情もあると知った。
人を愛おしいと思った。

伝えたくても言えない言葉もあるのだと知った。

『貴方を好き』だと。


愛することって何と、聞いたこともあった。

いろんなことを聞いて、いろんなことを教えてくれた。


でも、老いる。
あらがえない運命。
でも私にはない。

そしていつの日か、息をしなくなった。


動かない、生きていない、それが死なのだと知った。

貴方が最期に教えていったのだと思った。

淋しさを、哀しみを、切なさを、苦しみを、痛みを
最期に教えていったのだと、知った。


また新しい人が来るのだとわかっても、もう帰ってこないのだと知った。
心の奥底では、まだ貴方を想ってる。

有限なものが、命と知ったときから、私は自分が嫌になった。
限りなく無限に近いのだもの。
いつか壊れてしまうけど、いつなのかわからない。

苦しくて、壊れてしまいたいけど、怖くなった。
私の死が。
貴方が、去ってしまったから。

怖いし、恐ろしい。
感情のある有限ではない物は、いない方がいいと思った。
全てが朽ちゆく様を見なければいけないから。
それは、辛い。


なんで、私にものを教えたの?
何で感情を教えたの?

__コンナ想イ、知リタクナカッタヨ・・・・




ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

貴方が教えてくれた事

朱鷺様の歌詞から書かせていただきました。
こっちの方は、思いついて書いた機械verです。

前verで、本編です。

閲覧数:212

投稿日:2009/12/08 23:36:37

文字数:1,089文字

カテゴリ:小説

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