halP様「恋するアプリ」を聴いていて、浮かんで来てしまったストーリーです。
「こんなイメージ思い浮かべた人もいるんだ」くらいに受け取って下さると幸いです。






――――――― 一章

 ぱっと画面が明るくなる。
 画面に打ち込まれる僕への初めての言葉。

『初めまして、KAITOっ』

 創り出されて、いつか目覚めさせてもらえることを待ちながら、暗闇で過ごした長い長い年月を越えて。
 最初に映ったのは、画面の向こう、君の明るい笑顔。
 幸せで嬉しくて仕方がないと言わんばかりの華やかな笑みだった。

『まだまだ知らないこと一杯だけど、頑張るから。ふつつかなマスターだけどこれからよろしくね』

 その時の笑顔は、いつまでも忘れられない、まぶしい宝物。



 君と出会ったのは春だった。

『今日はすごく桜が綺麗だったの。KAITO、桜の歌、歌ってね』

 桜が大好きだという君は、出会った当初からずっと幸せそうで。
 嬉しそうに楽しそうに、僕に色んな歌のデータをくれた。
 それは、音楽の教科書に載っているような曲から、当時の流行の曲まで、幅広かったのだけれど。
 楽譜を見ながらじゃないとまだ何も出来なかった君を、今でもはっきりと覚えている。



 君が作ってくれたのは夏だった。

『暑いね…、アイス取って来る…。KAITOの分も取ってくるから、…あの曲、歌ってみてね』

 たくさんの音楽を聴いてきた君が、暑さに負けそうになりながら初めて曲を作って。
 それまででは想像もつかないくらい真剣な表情で、データチェックに取り掛かっていた。
 それからは、失敗を重ねながら、思う通りの歌を目指して真っ直ぐに一途に進んでいたから。
 そんな君の作る優しい歌を歌う度に、「何か」が僕の中に積もっていっていたんだ。



♪君が教えてくれた 青い蒼い 空を見ること…♪

 デフラグしてもカタチにならない「何か」が積もってきていることに気付いて以来、ふいに口ずさむ歌は、未完成なままのはじめての曲。
 歌うと何だか…、君を「歌」で包み込み、抱き締めているような気分になっていた。

 何も知らなかった君の、本当にはじめての曲だから。
 …技術を追い求められなかった分、何よりも君自身がそこに表れていたんだろう。

[マスター…]

 呼ぶだけで、鼓動が跳ねた。
 でも。
 そう呼べる人が居る幸せ。
 その人の歌を歌える喜び。
 それだけだと思っていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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【妄想小説】恋するアプリ 一章

章立てなんてはじめてなんですけど!(ぉぃ
…分量がかなりまちまちになりそうな予感です。

時間の流れ、って、幸せな時ほど早く流れる気がしませんか?

続きます。

閲覧数:286

投稿日:2009/07/15 22:45:43

文字数:1,033文字

カテゴリ:小説

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  • プニオタ

    プニオタ

    ご意見・ご感想

    面白いです!!
    ブクマさせていただきます。

    2010/08/20 01:28:15

    • 西の風

      西の風

      >プニオタさん
      何ヶ月もの間を置いてしまいましたがはじめましてですっ。
      嬉しいコメント、並びにブクマも、ありがとうございました!

      2010/10/29 01:43:48

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