「生きていてごめんなさい」
いつの間にか人と出会うたび、嫌味を言われるたび言っていた。
口癖になっていた。
弱音ばかり吐いていた、私のちっぽけなつまらない人生。
彼女と出会う事で全てが変わった。
私が住んでいる村は皆綺麗な緑の髪で、髪色に男女の差は無い。
だけど私だけ仲間はずれの白い髪。
母だって父だってあるいは兄だって、皆綺麗な緑の髪なのに。
家族の中でも私だけ白い髪。
私が産まれたせいで家族皆が非難されるようになった。
私は産まれてはいけない子だったの?
今日、そろそろ冷蔵庫の中身が無くなって来た。
買い出しに行かなければいけないから、私は憂鬱だった。
普段私は極力外に出ないようにしている。
買い物は市場に行かなければならない。
市場には人が溢れかえっていて、私の白い髪はとっても目立つ物だった。
外に出るたび、それを思い知らされる。
私はフードをかぶって外へ出た。なるべくこの白い髪を外にさらさない様に。
市場に着いた時、警備員が私を止めた。
「フードを取ってください」
市場では防犯上素顔がわかる様にしなければならない。
私はおずおずとフードをを取った。
「・・・・・・・・・・」
私の白い髪を見て警備員は驚いた。
そして入ってもいいですよ、というような合図を出した。
私はメモをチェックしながら、なるべく考えずに必要な物だけを買う。
私の事を非難する人を尻目に見ながら走って、家に戻った。
「・・・そういえば今日はお墓参りに行かなきゃ」
私は1ヶ月に一回母の墓参りに行く。
父の墓は都心にあるのでなかなか行けない。
墓参りを済ませて、森の奥にある千年樹の所へ行った。
私と同じ白い色の目立った樹。
だけど、その木は立派に、自慢げにそびえ立っていた。
私はそこで一人願いをかける。
「一人で生き続ける事、それはとても寂しいです。誰でもいいから私の」
「友達になってほしい」
「・・・え・・・」
「え?」
「あ、ごめんなさい、何でもないです」
「え、あ、えっと・・・」
きっとこの人も私の白い髪の事を思ったのだろう。
「・・・・友達が欲しいの?」
「あ・・・」
あの願いを聞かれたのは微妙に恥ずかしい。
「なら私がなってあげる!」
「え?」
その子は私の白い髪などは気にせずに話しかけた。
こんなふうに、普通に話しかけられた事は初めてだった。
初めてで、何もわからなかった。
だけどいつの間にか私達は仲良くなった。
彼女はミクという名前で、歌が好きな元気な子だった。
だけど私と彼女は何もかもが違った。
村の中の誰より輝く緑の髪、その優しい声と笑顔。
誰からも愛される子だった。
「ミク・・・・」
「?」
「どうして嫌われ者の私にも優しくしてくれるの?」
「ハク・・・」
「自分より劣る女を、憐れんでるつもりなの!?」
彼女は卑屈な私を抱きしめた。そして囁いた。
「ハク、貴女は誰より素敵な人よ、自分を粗末に扱わないで」
涙がこぼれた。
たとえ世界の全ての人が私を蔑み笑っても。
ここに必要としてくれる人が居るんだ。
ここに私を信じてくれる人が居るんだ。
それだけで・・・十分幸せな事だったんだ。
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