「ちょっとあんた」
ある晴れた昼下がり。
突然ノックもせずに堂々と部屋に上がりこんできたのは、隣に住む女の子だった。女の子の目は猫科の動物を彷彿とさせる瞳で、それが今は釣り上がっていて余計に怖い。女の子は腕を組んで私を見下ろす。
「あんた、緑の髪の子と仲良くしてるんでしょう?」
「はあ……」
女の子の言い方が刺々しい。別に仲良くするくらいなんだと言うのか。
しかし、女の子にそんな融通が通るはずなかった。
「あんたみたいな子が仲良くできるわけ無いじゃない!その子が仲良くしているのだってきっと同情よ」
その言葉は……私の心にグサリと深く突き刺さる。
女の子はふんと鼻で見下すように笑うと、乱暴にドアを閉めて家を出て行った。
唇を噛み締めて、女の子の出て行ったドアを見つめる。
……そんな事は、もうとっくに分かっているのに……
自分でも分かるほど体が小刻みに震える。頭の中で今まで自分に与えられてきた迫害の様子が何度も何度もリピードする。
そして……彼女の前では絶対に言うまいと誓っていたあの口癖を……呟いた。
「生きていて……ごめんなさい」
「……え?」
彼女は……ミクちゃんは、きょとんとした表情で私の方へ顔を向けた。
いつもと同じ千年樹のすぐ傍。私は自分と仲良くしているのは同情なのかとついさっき疑問を投げかけた所だった。
私は答えが怖くて、俯いたまま必死に頷いて、そして胸の前でギュッと拳を作った。
「私の髪は白くて、村の皆にも避けられてるのに、何故貴方はそんなに仲良くしてくれるの?自分より劣る女を……憐れんでるつもりなの?」
しかし……ミクちゃんの答えは意外だった。
「……そんなわけないじゃない」
そして彼女は私をそっと抱きしめて、こんな卑屈な私に優しい声で囁いた。
「貴方は誰より素敵な人よ」
私の瞳に溜まっていた涙が、零れ落ちた。
「う……うあああああぁぁぁ……」
彼女の腕の中で、私は泣き続けた。
その間、彼女は何も言わずにただ背中をさすってくれていた。
たとえ世界の全ての人が、私を蔑み笑っても。
必要としてくれる人がいる……―。
それだけで幸せだった。
白ノ娘 ―2―
2回も途中保存してしまいました;白ノ第2弾です。
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