08
爆発音。
一瞬、なにも聞こえなくなる。
視界も明滅して平衡感覚がなくなった。
「危ない!」
耳鳴りがしつつもなんとか立ち上がろうとしたところを、誰かに突き飛ばされる。
抵抗できず、よろめきながら倒れる。
僕を突き飛ばしたやつは、僕が顔をあげたときにはもう、直後に飛来した銃弾に胸を赤く染め、頭部を吹っ飛ばされていた。
あれはきっと……オケロだ。
直前の爆発は、使い捨ての手持ちロケットランチャー。
それがすぐそこの壁を吹き飛ばした。
そのせいで僕はまともに立っていられなくなり、その後の銃撃をオケロが身代わりとなって死んだ。
よくある、ありふれた戦場の風景だ。
あの導師の演説から一週間後。ソルコタの首都、アラダナに入ってすぐのことだった。
ここは敵に場所が割れている。すぐ離れなければ、とは思うけれど、まだ頭がまともにまわらない。
「カル!」
呼ばれて、ふらつく頭をおさえて声の方を向く。
「あれを持ってこい!」
大人の兵士が指差しているのは、オケロのバックパックだ。
アレには五キログラムものプラスチック爆弾が入っている。
プラスチック爆弾は下手な衝撃では爆発しない。ここで爆発する心配よりも、この先で必要になるそれを置いていくことの方が問題だった。
僕は瓦礫から銃だけ出して、手持ちロケットランチャーが撃ってきた方に牽制射撃をする。
――迷ってる時間なんか無い。
僕はすぐに飛び出した。
まだ生暖かいオケロの身体を抱え、それを盾にする。残酷な使い方だとは思ったけれど、四の五の言っていられない。
オケロの身体越しに衝撃。誰かが銃撃をしてきている。
僕はそれに耐えながら、オケロの死体ごと、プラスチック爆弾の入ったバックパックを運ぶ。
壁の影からは、数人が向こうに銃を向け、僕への掩護射撃をしていた。
……重い。
僕より三つ歳上のオケロは、その分体格もいい。たった二メートル引きずるのに、絶望的なほどに時間がかかる。
なんとか自分の元いた瓦礫の近くまでやって来ると、大人の兵士――ジェレミーだったと思う――が手を伸ばして、オケロごと僕を瓦礫の影に引っ張り込む。
「またRPGが飛んでくる前に、向こうの建物まで逃げるぞ」
ジェレミーがあごで指すのは、背後の道路向かいにある小さな食料品店だった。
有無を言わさない口調だったが、それには僕も同意だ。RPG――手持ちロケットランチャーの威力を思うと、ここでモタモタしていたら五分も生きていられない。
周囲の警戒をしながら、そこにいた五人はひとかたまりになって食料品店に入る。
戦場と化したここに、もう一般人はほとんど残っていない。この店も無人で、店内も弾痕がたくさん刻まれていた。
僕はカウンターの裏に入ってようやく一息つき、オケロの身体を転がす。
彼の背中からバックパックを奪うと、そのまま僕が背負う。
奴らの中心部にたどり着くまで、これを失うわけにはいかない。
アラダナという街は、ソルコタの独立後、新しく作られた都市だ。だからなのかは知らないが、格子状に道路が敷かれ、綺麗に区画が分かれている。
アラダナの東側の警備が強固なのはわかりきっていた。だから僕らは、迂回して西側から急襲した。
アラダナには四階建てや五階建ての高い建物がたくさんある。いくつもの戦車がそんな建物に突っ込んで破壊の限りを尽くす様は壮観だった。
あっという間に五、六ブロックを制圧し、行政府庁舎は残り三ブロックにまで迫っている。
遠くて爆音。
カウンターから少しだけ外を覗いてみると――とはいえ、食料品店の入口が狭苦しくてよくわからなかったが――遠くに煙が立ち上っている。
「……立法府、アラダナ裁判所だな。あっちは完遂したか」
そばにいたジェレミーが、その煙を見てポツリとつぶやく。
そんな彼と目が合い、お互いにうなずき合う。
「俺たちもやり遂げないとな」
安心させるためか、にやっと笑って見せる大人の彼に、まだ十一歳だったチャールズの面影を見た。もしかしたら、遠い親戚だったりするんだろうか。
チャールズが死んだのは、最近のことなのに……すごく昔のことのように感じられてしまう。
「……」
当然、チャールズの親戚なのか、なんて馬鹿なことをジェレミーに尋ねたりはしない。
「裏口から抜けるぞ。全員ついてこい」
この五人の中で、自然とジェレミーが指揮を執っていた。けれど、誰も文句を言わない。大人の兵士は彼だけだし、僕ら子ども兵には階級なんて存在しないからだ。
僕は静かにバックパックを背負い直し、行政府庁舎に絶対にたどり着かなければならない、という思いを新たにする。自動小銃を構え直し、ジェレミーが開けた裏口の扉から外へと足を踏み出した。
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