某日。特務課にて―。

「…つまり、君は僕にアドバイスを求めてここに来たってわけ?」

「……はい」

僕はこの日、ある用があって特務課を訪れた。
警視庁特務課はけっこう独立した組織らしくて、
僕が突然訪ねたというのに、すんなり僕を部屋へ招き入れてくれた。

メイコさんから聞いた。
カイトさんも実はボーカロイドらしい。
その実力、能力をかわれてここで働いているそうだ。

「…同じ男性型ボーカロイドで、思い当たるのはカイトさんだけ
 でしたから……」

その目的のカイトさんは、アイスを頬張っている。
正直、頼りになるのかわからない人だった。

「ん~。やっぱり、そういうのは裸マフラーでしょ?」

「……は?」

真顔で言うもんだから、素直に受け止めてしまった。

「……冗談はやめてください」

「えー、冗談じゃないよ?僕はいつも真面目♪」

「……(■_・)」

「な、なんで哀れなものを見るような目で見るの!?Σ( ̄_ ̄;)」

あなたをあてにしたのが間違いでした。
そう言わんばかりに立ち上がると、彼はいきなり僕の袖にしがみついてきた。

「だめぇえ!帰らないでぇえ!!((T□T)))」

「は、放してくださいッ!!Σ(■△◎;))」

「めーちゃんは一人で巡回に行っちゃうしー、寂しいよぅ!!」

「子どもじゃないんですからぁああ!!Σ(□ ̄;)ノノ」

「帯人君には雪子ちゃんがいるけど、お兄さんは独り身なんだよぉー!」

なんなんですか。その悲痛な叫びは…。
しかたなくもう一度席に着くと、カイトさんはコーヒーを注いでくれた。
……もう一個、アイスクリームを取り出しながら…。

「やけ酒ならぬ、やけアイスですか……?」

「これはいつもどおり♪」

「……」

僕はアイスを頬張るカイトさんから、視線を下に移した。
テーブルの上のコーヒー。
ブラックコーヒーのなかに、僕の顔が映っていた。

……なんて顔をしてるんだ。僕は―。
彼女は「笑って笑って」と言うけれど、そんなの…。

そんなの…。

「ねえ、君さ」

「はい!」

突然声をかけられて、僕はすぐに顔を上げる。
カイトさんのまなざしは真剣そのものだった。

「大事なポイント、忘れてる」

「…へ?」

そういうと、彼は目を伏せて優しげな笑みを浮かべた。

「ポイントは『相手に想いを届ける』っでしょ?
 どんな形であれ、方法であれ、大切なのは君の一生懸命な姿勢だと
 思うなー。僕は、ね」

「僕の姿勢…?」

スプーンをズンッ!と突き出すカイト。
思わず目を見開く帯人。

「とにかく一生懸命に!!結果はついてくるからさッ♪」

結果は、ついてくる―
その言葉に、僕は体中を空気が駆け抜けるような感覚に襲われた。

なにやってんだろ。僕…。
形とか方法はどんなんでも、いいんだよ。


彼女に、伝えたいことがあるんだ。
大切なことが―


帯人はすぐに立ち上がった。
その瞳は、爛々とした光りに帯びている。

「カイトさん、ありがとうございます」

「ほぉーい♪」

カイトさんはアイスを食べながら、軽く手を振った。
僕は頭を下げて、急いで部屋から出た。

時間はもうない。
決戦は明日なんだ。


廊下を走っていると、見覚えのある人影を見つけた。
それはコートに身を包んだメイコさんだった。

「あ、雪子んとこの子」

「お久しぶりです。メイコさん」

「どうかしたの?」

「いえ。もう…用は終わりましたから。
 …あ。そうだ。カイトさんが寂しがってましたよ」

「ん? そうなの?」

「一人で寂しそうにしてましたから、声をかけてあげてください」

そう言い残し、僕は軽く頭を下げて駆けだした。
メイコさんは頭をかしげていた。

帯人は笑いをこぼした。

「カイトさんも、がんばってくださいね…」

街はすでにクリスマスのイルミネーションで包まれている。
今年一番の大きなクリスマスツリーの点灯日は……明日だ。

僕は駆けだした。
ボーカロイドのはずなのに、なぜだろう。
血中にマグマが流れ出したみたいに、体中が熱かった。


――決戦は明日。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

優しい傷跡 番外編1「決戦は明日!」

【登場人物】
増田雪子
 帯人の恋人でありマスター
帯人
 雪子の恋人でありボーカロイド
咲音メイコ
 特務課刑事
始音カイト
 しゃべらなければ正統派イケメン
 しゃべれば変態に限りなく近いなにか

【コメント】
ギャグってなにそれ?おいしいの…?ww(・ω・;)
誰かギャグを教えてください!ギャグを!ww(泣

リクエストをいただいたので、番外編を書かせてもらいました^^
ちょっと続きますよー
砂糖吐くほど甘いですよー
そしてベタですよー、鉄板並みに!

よければ、おつきあいください♪≧ワ≦
以上、アイクルでした!!

閲覧数:1,078

投稿日:2008/12/22 22:30:57

文字数:1,718文字

カテゴリ:小説

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