アナログな置き時計が時間を刻む。
ちくたく ちくたく ちくたく ちくたく……
12時まで、あと10分。
トントン、トン。
暗い部屋の中で響いた音に、気づかないふりをする。
トントン、トントン。
「……………………………………。」
トントントン。
「リン、開けていい?」
黙ったまま、マットレスの上で膝を抱える。
ドアノブが回り、扉が薄く開いた。
あれ、カギ閉めなかったっけ? うわわどうしようリンのバカッ!
無視した気まずさもあって、とっさに仰向けで寝転がる。
まぶたの裏が少し明るくなると同時に、控えめな足音が近づいてきた。
「………リン、眠ってる?」
はい、眠っております。なんて答えるわけはない。
いつも隣にいる大好きなレンの、声。
聴くだけで元気がわいてくる明るい声が 今は心なしか切なげで、今すぐ起きあがって抱きしめたくなる…ってダメ! 悲しいのはリンの方だもん!
悪いのは、レンなのに、
「ねぇ、リン……」
なのに………
「僕、何かした……?」
…………………。
「ねぇ、答えてよ、リン」
………………ずるい。
「なんで避けるの………?」
耳に届くレンの声は今にも泣き出しそうなほど掠れていて。
眠ってるリンを起こさないように配慮しているんだろうけど、逆効果だ。 どんどん頭が冴えてきて、目の裏が熱くなる。
「教えてよ………」
耳にかかる熱い吐息に、肩が強ばって……………え?
「リン………」
あの、レンさん? ちょっと近くないですか? 近づきすぎじゃないですかっ!?
レンが大接近していたことに今更気づく。
レンはリンのベッドに座り、上半身だけリンに覆い被さる体勢で語りかけていたわけで。
急に心拍数がはねあがる。
もうレンの耳に聞こえるんじゃないかってくらいに全身が速いリズムを刻んでいて、半分 意地でまぶたをぎゅっと閉じた。
すると少し動く気配がして、リンの耳に、なにか柔らかいものが…………
―――フッ
「ひゃあぁあああぁぁあぁあああ!?」
もう速攻で起きあがった。 予測してたのかレンはひょいと避けたから、頭突きをしてしまうことはなかった。
「あ、起きた?」
あまりにも爽やかな笑顔で飄々と言うから、はめられたんだと気づいて、
「リンの顔真っ赤。 相変わらず 耳 弱いね、震えてるし」
「だ、誰だって弱いよバカァ………」
怒りたいのか泣きたいのか、気持ちがごちゃごちゃになってよくわからなくなった。
情けない顔で、情けない声を出すしかなかった。
楽しそうに笑って、レンが部屋の灯りをつける。
白熱灯の電球はすぐに明るくはならないけれども、温かい色の光でリンの部屋を照らした。
きれいな指で、レンがリンのほつれた髪をといてくれる。
「あーあ、リンの髪 すごいことになってるよ。 僕ほどじゃないけどリンもくせっ毛なんだから、気をつけないと」
苦笑いするレンに胸が苦しくなる。
なんで、なんでそんなにいつも通りなの?
今日は、
今日は………
12月27日
リンと、レンの、誕生日なのに。
いつも夜遅くまで働いているマスターはなかなかお休みがとれない。
だから毎年、クリスマスといっしょくたにしてお祝いしてもらってた。
でも、レンだけは いつも別々のプレゼントをそれぞれに用意してくれてたんだ。
プレゼントがもらえないから悲しいんじゃない。
いつも大切に思ってくれているのも知ってる。
でもやっぱり、君と一緒に生まれることができた奇跡の日に、
生まれてきてよかったね
生まれてきてありがとう
生まれてきておめでとう
そんな想いが欲しいんだ。
なのに今日1日、レンは冷たかった。
話しかけても素っ気なく答えるだけだし、昼間はずっと どこかにいってた。
愛用のギターを背負って楽しそうに出かけていった後ろ姿。
ああ、きっとバンドの仲間に会いに行ったんだ。
誕生日おめでとう の 言葉も忘れて………
「ふ、ええぇぇえぇ~……」
「ちょっ どうしたの リン!?」
悲しいんだよ
悔しいんだよ
『今日』は もうすぐ終わってしまう。
ベッドの下に隠したプレゼント、いつ渡せばいいの?
時計の針が上に向かうにつれて込み上げてくる焦り。
でも 渡したらどんな反応をするのかが怖い。
気まずい顔なんかされたら、きっとおもいっきりなじってしまう。
レンにそんなことしたくない。
汚ない思いでいっぱいのリンを知られたくない。
「ヒッ…ク………ふっ………ヒッ」
うつむいてしゃくりあげていると、冷えきった体が暖かいものにふわりとおおわれた。
それはリンの肩にもたれかかるように被さって、首筋に顔をうずめながら、まともに息ができないリンよりも苦しそうなため息をはいた。
「レ………ンッ?」
「………泣いてないで、言ってよ。 どんなことでもいいからさ。 なにも言われないで避けられるの、一番辛い」
絞り出すような言葉に、涙腺がまた崩壊する。
あるかぎりの力でレンの背に手を回すと、リンの肩を抱く力も強くなった。
「なにも言ってくれなかったのはっ…レンの方、だもん! 避けたのっだっ、て、レンの方から、じゃんかぁ~~」
「は? え、なに?」
とぼけた反応に、かっと血がのぼる。
「だからっ! 今日はリンと、レンのっ」
言い切る寸前、部屋の入り口から呆れたような声が飛んできた。
「……なっかなか降りてこないから見にきてみれば。 二人っきりでいちゃいちゃしたいなら先にそう言っときなさいよね。 誕生日 過ぎちゃったじゃないの」
……………………………………へ?
「や、違うくて! リンに避けられている気がしたから、ちゃんと訊こうとしたら泣かせちゃって、それで」
「女の子泣かしちゃ駄目だよね~。女心がわかってないくせしてサプライズパーティーしようとか10年早」
「あ、ん、た、が、言えたセリフじゃないでしょ、この万年激鈍アイス男!!」
「いっいたたた! か、関節はやめてメイちゃん外れるからー!」
「ど、どうどうメイコさん! 病院ざたになったらせっかくのお祝いムードに
水指しちゃいますよっ」
「ミクちゃん、その指摘は何かがチガウ!」
「あの~、お誕生日過ぎちゃったんですが………。 どうしましょう、お祝い……」
「「「「「「……………。」」」」」」
ルカ姉の一言で静まり返った室内。
………………………
「ふっ、ふふふっ」
「リ、リン……?」
訝しげに顔を覗いてくるレン。
もう、限界だった。
「ふふ、あははは!」
おかしくてしかたがない。
今日、いや昨日のリンはなんてくだらない誤解をしていたんだろう。 くよくよしていたのがとても馬鹿らしい。
そうだよ、レンが忘れるわけないじゃない。
こんな素敵なプレゼントを用意してくれるようなレンが。
「あー、馬鹿らし。 リンはすごい馬鹿」
「急にどうしたの?」
心配そうな顔をするレンに笑いかける。
「んーん。リンはすごい馬鹿だったんだなぁって。 変な勘違いをして、1日中ふてくされてたの。
誕生日パーティーしようとしてくれてたんだよね。 ありがとう、すっごい嬉しいプレゼント!」
ニコニコ笑うリンにレンは怪訝そうな顔をした。
「いや、違うよ。 リンへのプレゼントは別」
「へっ?」
そう言うと部屋を出てなにかをとりにいったレン。 戻ってきたその手の上には、包装もないみかん色のリボンが巻かれただけのCDケース。
ずいっと差し出され、受け取ったケースの表面には黒マジックで
゛Thank-you for your birthday ゛
と 書かれてあった。
「それ、曲の題名。 出来上がったのが昨日の夕方だったから、すごいギリギリだった」
思い出す、玄関で見送った幸せそうなレンの顔。
リンはどれだけの誤解をしていたんだろう。
リンはどれほどの幸せ者なんだろう。
「………っうぅ~~」
「えぇ、泣くの!?」
いや、泣くでしょうここは。
「レン 大好きっ。 リンと一緒に生まれてきてくれてありがとう!」
思ったままの言葉を言うと、レンは驚いたような表情をして、すぐにとびきり嬉しそうに笑った。
「 こっちの言葉 」
そう言って、レンは優しくリンを抱き寄せた。
おしまいっ♪
「私達、お邪魔よね………」
「いいなぁー、メイちゃん、僕らも おぼげふぅっ!!?」
「さっさとコレ←青い物体) 持って、退散しますか」
「あの~、パーティー………ケーキ…」
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ハローディストピア
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BPM=200→152→200
作詞作編曲:まふまふ
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ぱっぱらぱーで唱えましょう どんな願いも叶えましょう
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ゆるりー
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ご意見・ご感想
まにゃ
ご意見・ご感想
燃えたwww←
青いのすてておk←
少しエロイなwww
全然おkなエロさwww
2012/02/20 22:43:16
ゆず玉
我が子にブクマもらえた やほーい♪
青いのはとことん変態ですはい。よって雑に扱っておk!←「ひどいっ!?」
もっと雰囲気出したかったが、なにぶん経験値が0だから(^_^;)
受け入れてもらえてよかったお♪
2012/02/23 22:46:55