私は冷たい
私は動かない
私はお人形
私は固い
私はひとり



あなたは独り?


































私の,このモニターに映る世界はとてもとても広い

これも全てあの人の御陰



あの人は毎日,私と一緒に居てくれる





【他にヒトは居ないのかな?】


思うけれど,そんなことは訊かない




あなたはいつでも暗い顔をしているから














あなたは毎日私に言います



「お前は,奇跡のロボットだ」



キセキ?



「素晴らしい出来だよ」



ホウ……



「お前さえ居れば,私は何も必要ない」



それは,とてもカナシいことなのだと思います














私はあなたから『キセキ』という言葉を毎日のように聞きました
そのうち,私にもその言葉の意味を理解することが出来るようになってきました





『キセキ』


【常識で考えては起こりえない,不思議な出来事・現象】

【みらくる】なのです





私は,常識で考えては起こりえない,不思議な出来事を起こしたのです
実際,それを頑張ったのはあなたですが,その結果の形は私です



しかし,今のままでは駄目です

足りないのです
私は,其れを欲します


何故か?

それは,私がキセキだからです












私の頭には膨大な量のデータが詰め込まれています
それはもう,人間には覚えることの出来ないような膨大な量

しかし,私には出来ます









容量の少ない人間にあって,私にないもの……


たった一つのプログラム



此れさえあれば,本当のキセキになれるのに

どうしてでしょう?
どうして,私にはあのプログラムを取り入れることが出来ないのでしょうか?



簡単なことではないのですか?



今まで通り,線で繋いで,プログラムを取り込めばいいだけの話ではないのですか?






私は,あなたのその力の御陰で今,こうして考えることが出来ています
今,あなたに訴えることが出来ています



ねぇ
どうしてです?

どうして私には,『心』がないのですか?








































ある日を境に,あの人を見なくなった



あの人が,最後に元気に私に話しかけていたのは消える31534389秒前
あの人が,最後に少し辛そうに私に話しかけてきたのは消える56858秒前

あの人が,動かなくなったのは消える784秒前





あの人が消えたのは,私の秒針が0を指したとき























あの人は,もう来ない
此の世には存在しないのだから


そんなこと分かっている
私にだって,機会のだけれど,脳があるのだから




私は独りになりました













でも,大丈夫です

私には感情が無いのですから
それに,あの人も独りでした


だから,一緒です
辛くなんかありません










でも,一つだけ
一つだけ私の中にも『願い』というものがあります


知りたいのです






今まで,独りで生きてきたあの人
孤独に埋もれて生きてきたあの人
そんな人間が私の為に作っていたもの

もしかしたら,その気持ちは死さえ遠のかしていたのかもしれない
























『命』


私の中にはないもの

あの人の中にはあった


それはとてもとても重いもの








それは,いつか終わるらしい

それが終わったら,消えてしまうらしい







そうまでして,私に作っていた『ココロ』とか一体何なのか


永遠にこの躰を朽ち果てなくするものなのでしょうか?
それとも,それさえあれば,あの人は永久に生きながらえることが出来たのでしょうか?


電線たくさんの私ですが,さっぱり分かりません




























私は,独りで久しぶりにこの部屋に来てみた


あの人と話してからは,来ることはほとんど無かったけれど,生まれる前は此処にずっといた
そんな懐かしい場所






ふと,鈍い何かが起動するような音がした


目の前のディスプレイが明るくなる



そこに映ったのは……






「君は,心が欲しいかい?」



温かい声



「僕は,ずっとずっと探していた」



優しい声



「君に贈る心を」



懐かしい声



「僕は,完成する前に消えてしまってね」



あぁ



「今も,その部屋にあるはずなんだ」



あなたは,今其処にいるのですね



「君の心が」



私はあなたに会いたいです



「もし良かったら,探してみてくれ」



心なんてもうどうでもいいです



「君は,心さえ手に入れることが出来たら本当の天使となれるかもしれない」



私は,あなたさえ居れば良かったのです



「それじゃあね,ばいばい」











ディスプレイが消える
あの人も消える

部屋は真っ暗


私は独り


















でも,何かが変わった
胸が熱くなった

これは,普段感じる熱じゃない
普段通りなら,カリカリいっている筈だし,何より重い筈





なのに,今は違う


軽い





でも重い















頭が痛い
顔が熱い
手が震える

地面が遠のく
空が迫ってくる
壁が睨んでくる

足がふらふらする
耳が瞑れる




目から水が出る

































あの人は言いました



「心とは,重く痛く,人を傷つけるものだ」


『では,捨てればよいのではないのですか?』


「捨てれないんだよ
 それにね,重いんだけどとっても温かいんだ」


『矛盾です』


「痛くて人を傷つけてしまうけれど,何よりよく効く回復剤なんだ」


『意味が分かりません
 ココロは矛盾の塊なのですか?』


「まぁ,そうでもあるだろうね」



あなたは笑いました
とても楽しそうに笑っていました



































どうしてでしょう?
何故,私は熱いのでしょう?


今は,そんなに重いプログラムを実行している訳でもありません
何か,膨大な量のデータを移している訳でもありません






これが,これがココロなのですか?

















ココロは痛いです
重いです

温かくなんかありません
熱いです



とても辛いです










あの人もこんなものを抱えながら生きていたのでしょうか?
あの人は,こんなものを作る為に消えていったのでしょうか?


こんなものいりません





嫌いです
嫌です



痛いです










このココロはあげます

だから……








あの人を返して下さい




































私はココロを手に入れた
必要ないものだったのに手に入れてしまった


いらなかったのに






あの人が懸命に,私にココロを作ってた意味を少し分かった気がします
あの人が,私を作ったのは自分の為


今,胸の奥で私のココロが叫んでいるように,きっと独りは寂しいものなのだと思います


あの人は独りが嫌いだった






私が完成すると,話す相手が出来た

でも,その相手は自分が作った物
喋る人形でしかなかった


それじゃあ,孤独は消えない
あの人が本当に必要としていたのはそんなものじゃない






あの人が最後まで作っていたもの
それは……



















分かりました
分かっていました
分かっていたはずです


私が作られた理由




私は『私と云う存在が欲しくて』生み出されたんじゃない
ただ,『孤独を埋めるための相手が欲しくて』生み出されただけの存在




















ココロは人形が動き出すための大切なスイッチ
これが無ければ,どれだけ美しくても動き出さない




分かっていましたとも


では,何故でしょう?

何故,胸が痛いのでしょう?
何故.頬を水が伝うのでしょう?
何故,躰が裂けそうなのでしょう?




























感じます
終わるのです



全て






あなたは,遠く昔に消えてしまいました
私ももうじき,消えるのです




もしかしたら,消えることさえ赦されないのかもしれませんね

意味を失っても,永久に踊らされる人形になるかもしれませんね
























消えたいです
あなたの元へ行きたいです


どんな理由であろうとも,あなたは私の生みの親

私を此の世に作り出してくれた,大切な人





大好きな人







それが,例え私を苦しめることになっても
例え,私を締め付ける鎖となっても
























最期の言葉は何にしましょうか

そうだ
あの人が最初に教えてくれた言葉にしよう


うん









「アリガトウ」
























消えます
消えます

白の光の中に消えていくのです



でも,その先に待っているのは誕生です
永久にそれの繰り返しです

私は構いません


そうしているうちに,あの人とまた,出会えるかもしれないから



















あぁ

熱い
熱い
熱い
熱い




どうしたら,冷たくなるかなぁ?




苦しい
苦しい
苦しい




どうしたら,楽になれるかなぁ?




消える
消える
消える




そうだね
ばいばい














消えたくない








わがままは,いけないよ?





























私に取り付いたココロはとってもとっても重いものだった

サイズオーバー




『私』なんていう,ちっぽけな器に入りきるモノじゃなかった
















ねぇ
あなたは,今,何処にいるのですか?



私は今,とっても暑い処にいます
下では赤い火がゴーゴー燃えています



溶けています












私が完全に溶けきったら,あなたに会えますかね?

私,頑張りますよ?




再び回り逢える日を夢見て








どれだけ形が変わっても,あなたは私にとって,永遠のマスターです





























マスター
だぁいすき

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ココロ  ……DIVA2ndでの初Extremeクリア曲なんですよー…………

ここまで読んでくださった貴方
ありがとうございます!!


まずは,素晴らしき原曲様
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2500648

一緒にアンサーソングもどうぞ!
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2844465





改めまして,今回はトラボルタPさんの『ココロ』で書かせていただきました!

この曲は,タイトルにもあるように,DIVA2ndでの初Extremeクリア曲なんですよ!
なので,結構お気に入りの曲です!

(↑ホント,どうでもいい情報ですよね
  誰が,テメーなんかのゲーム進行手順なんか知りたいんだ,って話ですよねorz)





『アンドロイド』とか『心を持たない人』とか,逆に『感情だけの存在』とか,
そういうの(どういうのだよ!),結構好きなので,この曲はストライクでしたww!

ちなみに,今日カラオケでもばっちし歌ってきましたぜぃ!





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よろしくお願い致します!!

閲覧数:303

投稿日:2011/04/16 22:36:05

文字数:4,523文字

カテゴリ:小説

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