※この作品は彩音 ~xi-on~様の楽曲『青空の下で』の二次創作です。今回は脚本風に書いてみた。こういう曲とても好きだ。ありそうで中々無いタイプの曲。歌詞に共感。

『翻案・青空の下で』 日枝学

◯川沿い・堤防
  青空の下、川沿いの堤防を男と女が歩いている。
男「ここ歩くの、なんか懐かしいですね」
女「高校の時、よく二人でここ歩いたもんね。あーあ、もう高校が懐かしいなんて思うようになっちゃったかあ」
男「そうですよね。もう卒業してから六年、先輩については七年も経ったんですから、懐かしいのも当たり前かもしれないですね」
女「そうだねえ」
  二人とも、しばし口を閉ざしたまま歩く。
  男、少し歩いたところにあるベンチを指差す。
男「ねえ、一旦あそこで座りませんか」
女「いいね、そうしよう」
  二人、ベンチのある所まで歩き、座る。
男「……あの時は、すいません」
女「あの時?」
男「ほら、先輩が卒業する三ヶ月前のことです」
   ――   ――   ――
  七年前の冬、学校帰りの二人。川沿いの堤防にて。
男「そんな……じゃあ先輩は……」
女「ごめんね。けど、これだけは譲れないの」
男「先輩は僕を見捨てるんですか!」
   ――   ――   ――
男「あの時は本当に、すいません。何も分かってないのに、分かっているかのような口聞いて」
女「そんな、謝るほどのことじゃないよ。実際、当時の私が君を見捨てたのは事実だし」
男「けれど先輩のそれは仕方のないことですよ。将来の夢を持っている人であれば、誰だってああします。将来の夢とか、そういうものがなかった当時の僕は、それを分かっていっませんでした」
女「そっか……ありがとね。……けれど、当時の後輩君の行動を、あまり否定しなくても良いんだからね。ああやって怒ってくれるのは、物分り良くすんなり引き下がられるよりも、嬉しいんだから」
男「あ、すいません。ありがとうございます……」
女「どういたしまして」
  二人、少しの間沈黙。
男「こうして思い返してみると、色んなことがありましたね」
女「そうだねえ」
男「先輩は、卒業してからどんな風に毎日過ごしてたんですか」
女「卒業してからも色んなことがあったよー。大学行って、夢追いかけて、挫折して。人とぶつかり合うこともあったし、ぶつかり合ってから仲良くなることもあったし。社会人になってからもそうかな。色んなことに、出会って、別れて、出会って――その繰り返しだね」
男「へえ」
女「後輩君は?」
男「僕も似たようなもんです。僕の場合は、先輩と違って、やりたいことを見つけたのが大学の途中になってからだったので、それまではグダグダと部屋に引きこもったりしてましたけど」
女「ははは、後輩君らしいね」
男「引きこもるのが僕らしいだなんて、失礼な」
女「はは、ごめんごめん。ははは」
  女、笑いが収まるまでクスクスと笑い続ける。
  笑い終わり、女が再び話し始める。
女「それにしてもさ」
男「はい」
女「当たり前かもしれないけど、やっぱり私達変わったね。私も、後輩君も」
男「さすがに高校と比べると変わるもんですね」
女「うん。きっとさ、こういうのって、毎日の何でもない些細なことの積み重ね結果なんだろうなあって私は思ってる」
男「さっき言ってた、出会って、別れて、出会っての繰り返しですか?」
女「うん」
男「そうですね」
女「うん」
  二人、再び黙る。ベンチに座ったまま河が流れるのを見る。
  やんわりとした強さの風が吹く。
  男、立ち上がる。女の方を見て言う。
男「よし、それじゃ、もうそろそろ行くとしますか」
女「そうしよっか」
  女も立ち上がり、二人は再び歩き始める。
  二人の頭上には、青空が広がっている。

ライセンス

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【二次創作】翻案・青空の下で【脚本風】

※この作品は彩音 ~xi-on~様の楽曲『青空の下で』の二次創作です。今回は脚本風に書いてみた。こういう曲とても好きだ。ありそうで中々無いタイプの曲。歌詞に共感。

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投稿日:2011/06/25 19:52:44

文字数:1,570文字

カテゴリ:小説

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