14 ネカマ その3
さっき肉団子を投げつけてしまった招き猫を見ると、よそのギルドの女性の人におしぼりで顔を拭かれている。無意識ではあったがかなり勢いをつけて投げてしまったので、悲惨な状態になってしまったようだ。
「やだー、ちょっとこれ落ちないよ。」
女性は隣の人にそう言っている。うぅ、ごめんなさい・・。私は目を背け心の中で深く謝罪した。
「いいじゃん、そんなの、ただの招き猫だし。」
「そぉ?じゃ、いっか別に。」
だめぇぇ・・、よくない、よくないです。お願いします。どうか綺麗にしてあげてください。お願いします!お願いします!
私は心の中でそう訴えた。申し訳ない思いでチラッと招き猫を見ると、猫が私をすさまじい顔で睨んでいる。
・・・いや、これは幻覚であろう、そんなはずはない。しかし一瞬、怪談話に出てくる化け猫のような感じで、シャーっ!といって私を睨んだ。
ごめんなさい!ごめんなさい!私が悪いんです!私が、私が、肉団子を、それもたっぷりとあんのかかった肉団子を、私があんを欲張ったばかりに、私が、あんを余計に欲張ったばかりにこんなことになったんです!ごめんなさい!ごめんなさい!
「うぅ・・ごめんなさいぃぃ。許してくださいぃぃ。」
私は女性の胸元でキュッキュッと磨かれている招き猫に向かって許しを願った。
「・・おい、どうしたの?」
トイレから戻ってきたターナカさんが不思議そうに私を見ている。は!っと私は我に返った。
「いぇ・・・、ホントに何でもないです・・。」
「あそう。なんか今泣いてたぜ?」
「・・・それよりターナカさん。さっきの話、みんなに教えたほうがよくないですか?仮にも詐欺師みたいな人がギルドにいることになるのですよ?そんなのみんなだってきっと嫌ですよ。」
「まぁ、そうだとは思うけどさ、それ言うと絶対俺が話したってバレるからさ~。」
「何でそんなことでためらうんですか?」
「いや、俺もmisakiとはこれ以上深くは関わりたくないんだよ。ヤバイからさ。アイツの仲間とか危ないヤツ多いらしいし、暴力団関係とも知り合いらしい、変な感じで目つけられると嫌なんだよ。俺も何されるかわかんないからね。別にアイツにとって俺は親友ってわけでもないし、ただの知り合いにすぎないから。」
「・・・そうですか・・。」
「まぁ、悪いこと言わないからさ、何も関わらないようするのが一番いいよ。絶対直接会って文句言おうとか思っちゃだめだよ。」
そう言うとターナカさんは私の肩をポンっと叩いてセシルさん達のいるテーブルに戻っていった。
それじゃ・・どうすることもできないっていうの?ただくやし泣きをしろって言うの?チクショーー、私は唇を噛み締めた。
でも、まだ別に変なことをされたわけでもないし、住所とか電話番号を教えたわけじゃない。そういえばまだ、メールさえも教えていない。ゲームですぐ会えるから教えていなかった。だから、もう気にするのはやめよう。いや、まてよ。今後聞かれたらどうやって断ればいいんだろう。携帯は持ってないってウソつけばいいかな・・。たぶん今度会おうとかは言ってこないと思うけど、もしそうやって言ってきたら絶対危ないよね。その時はどうしたらいいんだろう。とにかくターナカさんに相談してみようかな。うまく助けてくれるかわからないけど。
というか、ターナカさんも心配してくれるのはいいけど、もっと早く言ってよね。私があのmisakiとへたに仲良くなる前に教えてくれればよかったのに。それだったらこんなめんどくさいことになってないと思う。あ、でも私が男って言っていたからターナカさんも軽く見てたわけか・・。そのへんは私が自分で悪いのか・・。いや、違うよ。それはレンのせいでしょ。あのアホレンが変なヤツが多いから男にしておけとか言ったんじゃない。
ん?確かに変なヤツがいた・・。misakiとかいう変なやつが実際にいた。あのまま男ってことでいたらmisakiとも今みたいに仲良くなんかなっていないと思う。結局はマヌケにも自分のことを話した私が悪いってこと?そうなの?そういうことなの?
私は目を真っ赤にして女性に綺麗に磨かれ、元の位置に戻された招き猫を見た。今度の招き猫はなんとも穏やかな表情で、君は何も悪くない。悪くないよ。悪くないニャーと私に言っているように見えた。
「うぅ・・まねきねこさん・・・。」
私は招き猫に向かって泣いていた。その時であった。私の後ろから声がした。
「んふっ、あなたもしかしてリンちゃんじゃない?リンちゃんよね?」
!!この声は!聞き覚えのある大人びた女性の声が聞こえてきた。ミスティさんだ・・。
15 ゲームでは高嶺の花 その1へ続く
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