†はじまりは朝から†
チチッッ、ピュルル・・・。
小鳥のさえずり。自然法則に従って昇ってく太陽。
全てが今を朝だと告げる。
二度寝したくとも、こんなに騒がしくて眩しいんじゃ落ち着いて寝られねーよ。・・・起きるかなぁー。
と考えたりするのだが、体は言う事を聞いてくれない。
体が重い・・・。そんなに眠いんかな?てか、鳥の声と太陽が目覚ましって、どんだけ健康体。
いや、もしくは爺、婆・・・。
・・・・・・なんか、ヤダ。
しゃーねぇか、…勢いつけてっ!
「ほっ・・・・と!」
グラリ。世界が回る。
「あ、・・・・・ア、レ?」
あまりの事に体を支えきれず、結局また、ベットに寝転がってしまった。
「っっ、ぅおあ゛ぁ゛――――!」
何だ今の、目眩か?うわー、初体験!てか、本当に世界って回るんだなー。面白いけど、頭にくる衝撃がハンパねぇーな。もぅ、体験したくないな。一回で十分だぜ。
頭の中で一気にまくし立てた少年――灯也(トウヤ)は頭の中で、一気に考えた。
・・・世界の違和感に気づかないふりをしたかったから。
・・・・・・そろそろ現実を直視しなきゃならないよなぁ・・・。
その世界の違和感というのは、
「・・・・・・どこだよ、ここ。」
そう、灯也がひどい目眩に襲われベットに寝転がったときに見えた天井は、いつも使っている寝室のものと・・・違っていた。
「あ、窓がある・・・」
ベットに寝転がったまま、首を反らすと窓が見えた。
「あ~~、こっから鳥の声やら太陽の光が入ってきたって訳かー。へーぇ。」
まだちょっと、現実逃避気味だ。
・・・俺がいつも使っている寝室とはどこも共通点がない。
あの寝室には窓がない。だから、鳥の声が聞こえるはずも、ましてや太陽の光が入ってくるなんて事は絶対に無い。
だめだ、頭痛い。さっきの目眩は収まったけど、考え事すると痛みが・・・。
これは、ただ現実を直視したくない俺の抵抗なのか?
多分そうだろうなぁー。こんなんすぐに納得できるって言う奴が居たら俺は100万払ってやるぞ!
などと考えながら、窓の外がどうなっているのか気になった灯也は、ゆっくりと窓の外を覗いてみた。
「・・・・・・・・。」
言葉にならないって、こーゆう事を言うんだなー。 ワォ、短時間で初体験が2つもー!
「・・・って、ガンバレ俺!例え窓の外が見渡す限りの草原だとしても、」
ガチャ。
灯也が窓の外を見て唖然としていると、扉が開いた。
開いた扉から、一人の男が部屋の中に入ってきた。
「おや。もぅ、起きたんですか?あと2~3日は寝てるかと思ったんですけど、」
「だあ゛ぁ゛―――!!!!もー、耐えられん!」
男は驚いた。そりゃそうだろう、窓を見ていた少年がいきなり叫び始めたら誰でも驚くはずだ。
「あ・・・あの?」
どりあえず会話をしてみようと試みるが、
「俺は、アルプス山脈のどっかに居る爺さんに引き取られた少女じゃねーんだ!」
断念。・・・ちょっとキレかける。
「見渡す限りの草原も、でけー犬も、サンタみたいな白ひげもふもふ爺さんもいるか―!」
「・・・し、白ひげもふもふ爺さん?あいにく僕にヒゲは無りませんが?」
聞き取れた言葉に反応を返してみたが、どうやら失敗だったらしい。
なかなか痛い沈黙がすぎる。
先に沈黙を破ったのは男の方だった。
「あなた、大丈夫ですか?さっき叫び声が聞こえたのでのぞきに来たのですが・・・」
へ・・・?
叫び声って、もしや
「き、聞こえた…んですか?」
多分、さっきの目眩の時の事だろう。近くに人がいる可能性なんか考えずに叫んだから、相当大きかったはずだ。
「うん。君の声よく通るみたいだからね、家中に響いてたよ。一度寝たら滅多に起きない僕が起こされるくらい。
・・・だから、大丈夫かな?って思ったから様子見に来たんだけど、まさか、あんな元気よく怒鳴られるとは思ってなかったねぇ・・・・」
男は笑顔で説明してくれているのだが、
「っ―――!!!ごめんなさいっ!すいませんでしたっ!」
男は笑顔だった。最初は苦笑混じりだったが本当に微笑んでいたのだ。
しかし段々と笑顔は、見る者に得体の知れない恐怖を抱かせる黒い笑顔へと変わっていったのだ。
怖ぇー!!笑ってねぇ、目が笑ってねぇよ!なんなんだこの人。最初ちょっと見たときは気弱で温厚そうな人物に見えたのに!?
・・・あれか、あれか!?あ、なんか綺麗な花だなぁー、って近づいてみると、実は自分を喰っちまう食虫植物でしたー!みたいなヤツなのか!!
「・・・・・・ねぇ君。さっきから僕に失礼な事考えてない?」
ぅお!読心術か!?
「いや、君めちゃくちゃ顔に出てるよ」
ま、またしても!!
「いやだから、顔に・・・もぅいいや。君とここで漫才しててもラチ開かないし」
男が呆れて会話を放棄した。ちょっと怒りが冷めてきたらしい。
「あ、そういえば君の名前聞いてなかったね」
この言葉は普通、扉が開いて部屋に入ってきたときに言うべきセリフである。
「おっと、その前に僕も名乗っていなかったね」
男は灯也の方を向き、胸に手を当て優雅にお辞儀をした。
「初めまして、僕の“適合者”(パートナー)。僕の名はフィティーズ。フィティーズ・クーアです。ティーズとお呼びください」
・・・・しばし沈黙が続く。灯也は次の行動を決めかねていた。
え、えっと・・・これはどう対処すべきなんだ?てか、なんでいきなり敬語になんだ!?俺は、この状況をどうすれば良いんだ!
灯也は冷や汗を垂らしながら、頭の上に“???”を浮かべていた。いきなりの一見美青年だが実はキレやすいらしい男――ティーズの変わり身にも戸惑っていたが、本当は次の行動を間違えたらマジでティーズにキレられるかも…、とか思って行動できずにいたのだ。
その様子で灯也の気持ちの前半だけ察する事の出来たティーズは大きなため息をついた。
「人が自己紹介をしたんだから、名前ぐらい教えてくれても良いんじゃないんですか?」
「?。・・・・・・!!」
灯也は合点がいってポンっと手を打った。
何もしゃべってはいなかったが、表情とその動作で納得した事を感じ取ると、呆れた顔をしながら続きを促した。
「あ―――・・・ぅん。紺野灯也(コンノ トウヤ)、です。何も分かってないんで、よろしく」
灯也は自己紹介を無難なところで締めて、ペコっと頭を下げてみた。
ティーズは灯也の自己紹介が終わると早足で、灯也の方へ近づいてきた。
「んっ?どうしたん、」
灯也が聞き終わる前に、頭の上にティズの手が置かれる。
「汝、紺野灯也。この世界とは異なる世界よりの来訪者なり。我、フィティーズ・クーア。この世界に安住し者なり。汝と我、今此処に“適合者”の結びを得る事を記す。女神よ、我らに祝福の印を授けたまえ!」
ティズが何かを唱え始めたとき、ティーズと灯也の周りが不意に光った。
ぅを!なんだこれ!?・・・てか、体が動かねぇぞ!
灯也は口を開いて声を上げる事も、首を動かして周りを見る事も出来なかった。しかし、ティズが何かを唱え終えて周りの光も消えたら、体も動くようになっていた。
何とかして体を動かせないかと力を入れていた灯也は、慣性の法則に従って
・・・転けた。
「ぅぉわぁ!!・・・・っっっ、てぇぇええ!! したたか頭打った、痛っいっ!」
転けた先にはちょうど机があって、その脚に頭をぶつけたのだ。そりゃぁ痛いだろう。
「・・・なにやってんですか、君は。大して詰まっていない頭のようなんですから、大事にしないとスッカラカンになりますよ」
ティズは呆れながらも心配した。まぁ、言葉にはだいぶ毒がしみこんでいたが。
初対面でいきなり叫ばれた事を根に持っているようである。
しかし、灯也には頭を打った衝撃の方が強かったらしく、まだ唸っている。
「・・・・そんなに痛かったんですか?」
ティズが今度は本当に、心配そうに灯也の横にしゃがみ込む。
すると灯也は涙目になりながら訴えた。
「・・・・・いだーいぃー」
もはや泣いているのと大差ない。
瞳にたまった涙が今にもこぼれ落ちそうである。まるで犬のようだ。
焦ったティズは、とりあえず傷の具合を見てやる事にした。
「あぁ、コブが出来ていますね。・・・触ると痛いですか?」
「いでーよぉー・・・」
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