注意:オリジナルのマスターが出張っています。
   不快感を感じられる方は閲覧を避けて下さいませ。











「たっだいまーっ」
「ああ、リン。おかえり」

 戦利品と共に居間に飛び込んだあたし、リンを迎えてくれたのは、ソファに座っていたマスターだった。

「ただいまーっ」
「ただいま帰りましたっ」
「ただいま」
「ただいまー」
「レン、ミク、ルカ、おかえり。KAITOもお疲れ様」
「あれ? マスター、メイ姉は?」

 先に帰ってるはずのメイ姉の姿が見えない。

「疲れていたようだから、先に休ませたよ」
「うー、そっかぁ…」
「KAITOも疲れただろう? 先に休むと良い」
「え? …って、マスターまさか…」
「あー、その辺りは後でゆっくり。すまないね」
「…じゃ、お言葉に甘えます」

 う? 表情はそうでもないけど、何かちょっとカイ兄怒ってる?

「カイ兄、お疲れなの?」
「え? まあ、少しはね。悪いけど先に休むね」
「ううん、ありがとっ」
「ありがとうございました」
「世話になった」
「ん、じゃ、お先に」

 にこっとあたしたちに笑いかけて、カイ兄は居間を出て行く。お疲れでイラついてただけかあ。

「あ、そうだマスター。これみやげな」

 そんな言葉と共にでんっ、とレンがマスターの前に置いたのはたこ焼き。なんとその数6パックっ。

「おみやげ?」
「私からはこれを。確か、お好きでしたよね?」

 すっとミク姉が差し出したのはラップにくるまれた棒つきあんず飴。

「あ、あたしからはこれねっ」

 水の入った袋の中で泳いでいる金魚を見せると、マスターが驚いたように目を見開いた。

「私からはこれだ」

 ルカ姉が取り出したのは夏の風景が水彩で書かれた絵葉書。

「えっと…、ちょっと待って。皆、わざわざわたしに?」
「だって、マスター、何だか七月が近付く度にため息増えてたんだもん」
「…え?」

 あたしの指摘に本当にびっくりした顔。

「って、マスター自覚してなかったのぉ?」
「無意識だったんだろ」
「言葉にはならないですけど、態度が雄弁なんですよね」
「私でも分かるくらいだからな」

 レン、ミク姉、ルカ姉も立て続けに言う。

「だからお祭りにでも行けば気分晴れるかなあって思ったのに、マスターさっさか帰っちゃったし」
「お前は自分が楽しんでただけだろ」
「あたしが楽しまないでマスター楽しませるなんて出来ないじゃんっ」

 レンに言われなくたって、ちょーっと走りすぎたかなあ、とは思わないでもないけど。

「だからせめておみやげで、少しでも楽しかった気分をおすそ分け出来たらなって」

 マスターが何度か瞬いて、あたしたちを見回して、それから、すっごく嬉しそうに笑った。

「レン、ミク、ルカ、それにリン。本当にありがとう。心配をかけてすまなかったね」
「別にいーよ」
「気にしないで下さい」
「こっちが勝手にやったことだ」
「マスターが笑ってくれたから良しっ」

 うんうん、やっぱり大切な人には笑ってて欲しいよね。

「あ、金魚鉢持って来ますね。金魚さんを入れてあげないと」
「そだねっ、弱っちゃったら大変っ」
「綺麗な絵葉書だね。手漉きの紙に水彩画か」
「露店の主がリサイクルで作った紙に自分で絵をつけたらしい」
「ああ、牛乳のパックで作れるあれかな」
「折角だから手紙でも出したらどうかと思ってな」
「…気を遣わせたみたいだね」
「だから気にするなと言っている」
「はい、金魚鉢、お待たせしました」
「ありがとーっ。ん、コレで良し、っと」
「元気に泳いでいるようだね」
「元気なの選んで取ったもん」
「リンが自分で取ったのか。上手だね」
「思った以上にちゃんと取れたよっ」
「ありがとう。と、そういえば、ミク。良く覚えていたね、わたしがあんず飴好きなこと」
「マスター、元々甘党じゃないですか。あんずもお好きなのは覚えていましたから」
「後で美味しく頂くよ。それじゃ、たこ焼きは温めて皆で食べようか」
「やっぱそう言うんだなー」
「だからこの量なんだね。露店のたこ焼きなんていつ以来かな…」
「久し振りだろ? だから買って来たんだ。ルカ姉も食べたことないだろうし」
「そうだな。わたあめ、というのも美味しかった。ふわふわで甘くて」
「恋の味ーっ」
「って何言ってんだリンっ?!」
「えっへっへーっ、だってそんな感じしなぁい?」
「そう言われてみればそうですね」
「ミク姉も同意してんなよっ?! いや、ルカ姉、アレは別に…っ」
「? 私は嬉しかったが?」
「っっっっっ、だああああああっ!」

 わざわざお土産のお礼を言いながら、あたしたちの騒ぎっぷりを嬉しそうに見守ってくれるマスター。
 レンが何か爆発してるけど、ま、いっか。
 ミク姉もルカ姉も楽しそうだし。
 少しはマスターの気も紛れたみたいだしね。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

七夕祭 8

別名:蛇足その1。
リンがお祭りにマスターを引っ張り出したかった理由を書きたかったもので。
…珍しく、カイトとメイコにほとんど関わっていない文章です(笑

自分では上手く隠せてるつもりでも、意外とばれているものですよねー。

閲覧数:331

投稿日:2009/07/06 21:55:08

文字数:2,030文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました