この職場で働き始めて半年。
少しは仕事にも慣れてきた。
嫌な上司もいるけど、我慢しなきゃいけないから頑張っている。
入社したばかりの頃はみんな優しかったけど、ある時から上司に怒鳴られるようになった。
私の先輩は私と同じミスをしても上司に怒鳴られないで「人間だから間違いもあるよ!次は気をつけようね!」と私と先輩に対しての上司の態度は誰が見てもわかるほど違いすぎた。
先輩は遅刻をしてもルールを破っても全て許される。
私はミスをしなくても怒鳴られる。
ある日、退職する女性がこう言った。
「ここではね、偉い人のお気に入りであれば長く何年でも働けるけど、もしもターゲットにされたら働きたくても働けなくなるわよ。だから、気をつけてね・・」
その日も私は上司に怒鳴られた。
でもこの日の上司は何があったのか知らないけど、いつも以上にイライラしていることだけは分かった。
怒鳴り散らされて1時間が経とうとしていた。
さすがにまずいと思った他の上司が「もう今日はいいんじゃない?」と止めに入ったが上司の怒りはおさまらない。
そして私を地獄に突き落とす言葉を放った。
「君は給料泥棒だよ!」

帰り道は雨が降っていた。
私は傘もささずに泣いて帰った。
絶望のどん底だった。
もうどうしたらよいのかわからない。
今は泣くことしかできない。
私は家につくと玄関ではなく隣りにある小さな建物へ向かう。
自宅とは別の鍵でドアを開けて小さな部屋に入る。
ここはかつて愛犬と過ごした思い出の場所。
今はこっちに来たかったのだ。
私は鍵を使って入るけど愛犬は私が作った専用の入口からいつも入っていた。
愛犬が天国に行く時に私はスペアキーを渡した。
いつでも遊びに来てねという願いをこめて・・。
あの子と過ごした日々かよみがえる。
辛い時や悲しい時は愛犬を思い出す。
友達に仲間外れにされた時もこの部屋で愛犬の隣りで涙を流した。
この部屋で遊んだりただただ過ごしたり色んなことをした。
ずっと我慢してきた。
もう辛くて耐えられない。
「リオ・・、助けて・・、会いたいよ・・」
涙が止まらない。

雨はまだ降っている。
もう少しここに居たい。
カタンと物音がした。
風が強くなってきたのだろうか。
私はこれからどうしたらいいのだろうか。
仕事が辛い。
行きたくない。

「アリスちゃん、迎えに来たよ」

声がした方に振り向くと、そこには茶髪の若い青年が居た。

これが私と夫の出会いでした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

旦那さまの秘密(1)

閲覧数:31

投稿日:2023/08/27 16:26:15

文字数:1,029文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました