電気が消えてから数分、まだ復旧してなかった。窓の外に目をやると台風に近い暴風雨が窓を叩いていた。オートロックが壊れるんだ…便利さもこう言う時は仇になるんだなぁ。溜息を吐いた瞬間、光と共にまた轟音が響いた。うううぅ…雷が特別恐い訳じゃないけどこれだけ近いと流石に恐い!光ってから間が無いのは確か雲が近いんだっけ?部屋の中だから落ちたりはしないけど、でもでも音がぁぁ~~~~!
「恐いなら外見なきゃ良いのに。」
「見なくても音は聞こえるじゃないですか、それに暗いから光だって否応無しに…。」
「これだけ雨風強いと復旧遅れるかもな…。せめて鍵だけでも戻ってくれないと
動けない。」
「電気系統は停電に弱いですね…段々暑くなって来ましたし…。」
空調も止まってしまったせいか部屋の温度も湿度も不快指数ごと上がっていた。かと言って窓を開ける訳にも行かないし…。
「暑い…日本の湿度嫌い…蒸し暑いの苦手…。」
「ジャケット脱げば良いじゃないですか?」
「傷が見えるから嫌です。」
「傷…?」
「昔強盗にぶった斬られたデカイ傷が背中にズバッと。見る?」
「それ冗談ですよね?」
鳴兎はニッと笑うとそれ以上は喋らなかった。流石に出来過ぎてるし冗談だよね?聞き返そうとした時耳が割れる様な音が鳴り響いた。
「ひゃあああああっ?!」
びっくりして思わずその場にしゃがみこんだ。耳がわんわんと響いてて心臓が凄い速さでドキドキしてた。何?!雷ってこんな大きな音鳴るの?!停電とかはあったけどこんな大きな雷初めて聞いた…。部屋の中だから落ちたりはしないけど…どうしよう、恐い…!
「大丈夫か?立てるか?」
「へ、平気です…全然大丈夫…!」
立ち上がろうとして尻餅を着いた。足がガクガク震えて力が入らない。もしかして腰が抜けた?どこのお婆ちゃんよ、私は…。
「ちょっとごめんね。」
「わっ…?!」
「軽っ…!食えよ、ちゃんと。密さんじゃなくても心配するよ、これは。」
「わ、判ってます!」
鳴兎は私を片手で抱き上げるとベッドに降ろした。力持ちなのか、それとも私が本気で軽いのか、片手で持たなくても…。私を降ろすと手で額の汗を拭っていた。
「あの…本当にジャケットだけ脱いだ方が…この前みたいに熱中症になりますよ?
傷の話が冗談じゃ無くても気にしませんし…。」
「…結構引くと思うけどねぇ、ほら、手術跡とかビビる奴居るじゃん?」
「傷なら私も同じですから。」
「え…?」
「もう大分目立たなくなりましたけど…それでも隠したいのは変わらなくて…。
変ですよね、此処にはお父様もお母様もお兄ちゃんも居ないのに…。」
急にゾクッと震えが走った。自分を抱き締める様に腕を持つ両手に力が篭った。
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