つーか早くリン来い。
ばにゃにゃ。と言ってしまってから、生暖かい眼差しを向けられているような気がして、一人でいるのがいたたまれない。しかし、件のチョコバナナファッジは美味かった。あいつには罪はない。罪があるのは、なかなか来ないリンだ。
アイスカフェオレのストローをがじがじ噛みながらレンが入り口のほうをじっとりと眺めていると、ようやく見知った姿がやってきた。
「遅っせえ。」
そうレンが言うと、リンは悪びれた様子もなく席に座り、良い買い物ができた。と服の入った袋をがさりと揺らした。
「ちょっとあの古着屋、良いよ。可愛いのいっぱいあったし、価格もお財布に優しい。」
「おま、俺が一人でどんなにか心細かったか。」
そう恨み言を言い募ろうとするレンに、リンは、はいはい。とやっぱり気にした様子もなくメニューを広げた。
「レンは何食べてんの、それ。パフェ?」
とレンの前においてある、食べかけのバナナファッジを指差した。
「えと。チョコバニャニャファッジ。」
「ばにゃにゃ。」
レン、滑舌悪すぎ。そうけたけたと笑うリンにレンは笑うな。と顔をしかめた。
「リンだって滑舌わるいだろうか。言って見ろ、バ・ナ・ナって。」
レンの不機嫌な言葉にリンは苦い顔をしながら、分かりました。と言った。
「あーはいはい分かりました。待たせた分もひっくるめて、ここは私がおごるわよ。」
「よし。じゃあ追加注文しよう。」
「ふざけんな。」
レンの言葉を一蹴して、リンはすみませーん。と店員に声をかけた。
「はい、お待たせしました。」
そう笑顔で近寄ってきた店員に、リンはメニューを指し示しながら、質問をした。
「このパスタの、サルシッチャって何ですか?」
「生ソーセージのことです。このパスタでは、腸詰にする前のお肉の状態で使用してます。」
「じゃあこのカレーって、どれぐらいの辛さですか?私、あまり辛いのは嫌いなんですけど。」
「トマトベースなのでそんなに辛くはないですよ。トマトの酸味が利いていて、さっぱりした味ですね。ご飯も五穀米を使用しているのでヘルシーですよ。」
リンの質問に、にこやかに店員は答えてくれる。その内容から、リンはがっつりとご飯を食べる気なんだな。とレンはぼんやりと思った。
わかりました。とリンは決然と顔を上げて注文を口にした。
「じゃあ、タルトタタンと、ミルクティー。」
、、、。
全然、食事じゃないじゃん。タルトタタンってケーキじゃん。じゃあ。って来たら普通その前に質問してたパスタかカレーどっちかを頼むと思うじゃん。 面食らうレンの前で、リンはきりっと真面目な表情で店員を見上げ、女性店員はにっこりと良い笑顔でご注文、承りました。と言った。
「じゃあ。じゃねえだろリン。明らかに食事を頼む気満々だったよな。」
店員の着ているカーディガンの緑色の背中を見送りながら、そうレンがリンに問うと、リンは、だって。と唇を尖らせた。
「なんか商品説明があまりに滑らかだったから、ツン全開にしたくなったというか。」
「意味が分からない。」
そうつっこむレンに、リンが、ここに来た当初の目的を忘れたのか。と喝を入れた。
「下剋上でしょうが。」
下剋上と、ツン全開。どう繋がっているのか。
そうレンが眉根を寄せていると、リンはちろりと店員が引っ込んだ厨房へ視線を走らせてこう言った。
「いい。座右の銘は、おk、緑は敵だ。」
更に意味が分からない。
「ちょっ、更に面白いことが。」
リンに緑、と呼ばれたホールスタッフの少女は、再び厨房に入るなり興奮した様子で、しかしやっぱり外に聞こえないよう小声で、厨房スタッフの青年に声をかけた。
「今、ばにゃにゃの男の子の連れの女の子が入ってきたんだけど。その女の子、食事オーダーをしそうな質問してきたんだけど、急に関係なくタルトタタン頼んだんだよ。今までの食事を頼みそうな質問は一体なんだった。って感じじゃない?」
やっぱり笑いをかみ殺しながらも興奮を隠し切れないホールスタッフの少女に、厨房スタッフの青年は、はいはいタルトタタンね。とやっぱり醒めた口調で返事をした。
「はいはい、どうでもいいから伝票くださいね。」
心底どうでもいい。といった様子でそう言った青年の額に、少女はべしん。と追加伝票を叩きつけた。
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