1
むかしむかしあるところに
綺麗な人がおりました
夜のように黒い髪
星のように黄色い目
彼女はとても美しい
むかしむかしあるところに
悲しい人がおりました
家族も友達もいず
自分の名前もあらず
今日も彼女は独りぼっち
夜の少女が話を開く
今日の童話は赤ずきん
「可哀想に狼に
食べられるなんて助けなきゃ」
名のない少女が話を開く
今日の童話は人魚姫
「泡になって消えていく
忘れ去られた私と同じ」
彼女らの生きるは童話の世界
灰をかぶれば姫になり
林檎をかじれば死んでゆく
針に指刺し眠りに入り
赤い靴をはけば足を切られる
さぁ今宵のハッピーエンドは…
もちろん
「私でしょ?」
「彼女でしょ?」
2
むかしむかしあるところに
不思議な双子がおりました
朝と夜のように真逆で
でもとても似た存在でした
むかしむかし周りの大人は
双子を引き剥がし
朝を捨て夜のみ愛しました
沢山の童話を見せ
ハッピーエンドを見せ
こう言いました
「いいかい、お前は
こうならなきゃいけないよ。」
紙の上で約束されたハッピーエンド(せいかい)を
必死で探しそして演じる
「ハッピーエンドは私でしょ?」
「私の最後はせいかいでしょ?」
灰をかぶれば姫になり
林檎で死ねば口付けを
塔に閉じ込められても助けがきて
眠りから覚めれば魔法はとける
私は正解
私がせいかい
朝の彼女は見放され
自分の最後はバッドエンド(ふせいかい)
そう言い聞かしこれまでも
ずっと独りで過ごしてた
でも少しあのこが羨ましい
なんでいつもあのこはせいかい?
「ハッピーエンドは彼女でしょ?」
「なら最後は私が変えてやる」
かぶる灰を炭にかえ
口付け前にとどめを刺し
塔には龍でも置いとくか
魔法は寝ている間に死の呪文を
貴女が正解?
なら私は…
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