なんども言いますがグロいので以下略。
ではでは大丈夫な人はどうぞ。
悪食娘コンチータ 第二章 コンチータの館(パート5)
「もう、何をしているのよ。」
両手を腰に当てて、拗ねたような口調でリリスがそう言った。場所は再び厨房、先程バニカの食事を終えて、食器の片付けにとレヴィンと二人で訪れた時のことである。その床には、騒動の際に散らばった食器や硝子細工の欠片に咥えて、堂々と倒れたマイヴェイの死体が転がされていた。
「仕方ないだろう、もう殺してしまったし。」
悪びれる様子もなく、レヴィンがマイヴェイの瞳、光を失ってあらぬところを見つめる瞳孔を見下しながら、そう答えた。
「そうじゃなくて、死体の処理はどうするの?」
「それは。そうだ、困ったな。」
漸く事の次第を理解した様子で、レヴィンはその頭皮を軽く掻きながらそう言った。激情に任せてマイヴェイを殺したはいいが、この後、この残された肉体をどうにかしなければならない。
「とりあえず、隠しましょ。」
うんざりするようにリリスはそう言うと、周囲を物色するように眺め回した。その途中、厨房の一角にあるワイン樽に注目してから、リリスはこう言った。
「あれに入れておけば、いいんじゃない?」
「駄目だ、まだ中身がたっぷり入っている。」
「大丈夫よ。」
リリスはそう言いながら、ワイン樽へと近付き、その上部に被されている蓋に手を伸ばした。
「重いわ、レヴィン、手伝って。」
リリスの言葉に、レヴィンは仕方ない、という様子でリリスと一緒にワイン樽へと手を伸ばした。そのまま、慎重に、誤って取り落とさないように気をつけながら、蓋を解放する。直後に、蒸すような強いアルコール臭が厨房を包み込んだ。その中には、樽から香る樹の香りを全て打ち消してしまうほどの、まるで血のように濃い、真っ赤なワインで満たされている。
「駄目だ、まだ半分以上入っている。」
「だから、いいんだって。」
レヴィンの言葉に対して、リリスが諭すようにそう言った。そのまま、言葉を続ける。
「東方には、蛇を酒に漬けて呑む風習があるみたいよ。」
「成程。」
リリスの言葉に、レヴィンは納得するように頷いた。蛇ではないが、人間のワイン漬け。人肉酒とでも言えばいいだろうか。
「コンチータ様が、喜ばれそうだ。」
「それじゃあ、早速始めましょ。」
リリスはそう言うと、すっ、とマイヴェイの遺体に手を伸ばした。そのままワイン樽へと引きずろうとして、ふと手を止める。
「服のまま入れるのは、どうなのかしら?」
その言葉にレヴィンはふむ、と頷く。どうせなら、素っ裸にしたほうが効能が高いような気がする。レヴィンはそう考えた。一体なんの効能であるのか、そこまではレヴィンの脳裏には閃かなかったけれど。
結局、レヴィンとリリスは共同でマイヴェイの服を脱がしにかかることになった。といっても、身動きすることがない死体から服を脱がすことは相当の困難を生じさせる。結論として、二人が持ちよった鋏で服を切りさいていくと言う方法で、マイヴェイを全裸にすることになった。切り裂かれた布切れが、まだ片付けのなされていない、割れたグラスの上にぱさり、と降りかかる。勿論、下半身の処置はレヴィンに一方的に一任されたわけだが。
「これでよし、と。」
服を剥ぎ取ったレヴィンは、満足するようにそう言った。そのまま、リリスと力をあわせてマイヴェイを引きずり、マイヴェイの脚からワイン樽へと押し込んでゆく。人が入るようには設計されていないワイン樽に、大人の人間一人を押し込むには膝を抱えて床に腰かけるような姿勢にしなければ到底入りきらないものだから、そのために浸した両手がアルコールにやられて軽く痺れ、ほろ酔いするような気分をレヴィンは味わった。やがてワイン樽の中に完全に沈められたマイヴェイの姿を見ながら、レヴィンは安堵したように吐息を漏らした。体積の増したワインが樽から溢れ出さなくて良かった、そう考えたのである。
「髪とか体毛も、剃った方が良かったかしら?」
一息ついたところで、リリスが思い出したかのようにそう言った。その言葉に、レヴィンは今一度、マイヴェイの遺体を、今度は樽の上から眺めた。確かに、ワインに浸り、膨張して広がる頭髪の様子はとても美しいとは言い難い。さて、どうするか、とレヴィンは僅かの時間思索したが、結論として諦めるように肩を竦めると、こう言った。
「入れてしまったものは、仕方ない。」
その言葉に、リリスもまた疲労を見せるように軽く吐息を漏らしながら、そうね、と答えた。そのまま、リリスは厨房の壁にあるクローゼットから箒を取り出して、訊ねる。
「それで、コンチータ様にはどう説明するの?」
「逃げた、とでも言うさ。」
リリスに倣って、レヴィンもまた箒を手に取ると、先程崩したばかりの陶器や硝子の欠片を丁寧に掃き始めた。
「明日の朝食は?」
「僕が作ろう。ブリオッシュくらいなら、焼ける。」
その言葉に、リリスは驚いた様子で瞳を見開いた。
「以外だわ。レヴィンに料理の腕があったなんて。」
「失敬だな。そのくらい、召使ならできるものさ。」
憮然とするように、レヴィンはそう言った。それに対して、リリスは軽く肩を竦めると、興味を失ったように、無造作に箒を動かし始めた。
「マイヴェイはどうしたのかしら?」
翌朝の朝食、レヴィン特製の、小麦粉の量も砂糖の量も、当然ながら焼き加減すらも大幅に誤って生煮えになったブリオッシュに、リリスが前菜とばかりに、前庭に生息する雑草をベースに調理した、というよりは盛り合わせただけの、どうやらサラダらしい物体を食卓に並べ終えた所で、バニカは不思議そうな表情でそう訊ねた。
「申し訳ございません、コンチータ様。マイヴェイは昨晩、お暇を頂きたいと申しまして。」
レヴィンが慇懃に、また深く追求されることを恐れて神妙な声色でそう答えた。それに対して、バニカは酷く残念、というように瞳をしかめながら、こう言った。
「そう。彼の料理はとても、美味しかったのだけど。」
美味しいだって!思わず、レヴィンは心の中でそう呟いた。毒をも喰らって尚そう述べられるとは、コンチータ様の胃袋はまさしく鋼鉄で出来ているに違いない!
「別の料理人は、すぐに手配いたしますので、暫く私どもの料理でご辛抱ください。」
平伏するように、深いお辞儀をしながらレヴィンはそう言った。何かを詮索されると都合が悪い、と考えながら内心に冷や汗を掻いたレヴィンではあったが、バニカは料理人に対してはそれ以上の愛着を覚えてはいなかったらしい。レヴィンの言葉に対して、バニカは納得の意を示すように頷くと、リリスが注いだワイングラスへと手を伸ばした。昨日作り上げることになった、例の人肉酒である。
「あら、美味しいわ、このワイン。」
一口含んで、バニカは驚いた様子でそう言った。続けて、ワインに満たされたデカンタを手にするリリスに向かって、バニカが訊ねる。
「これは一体、何のワインかしら。」
その問いに、レヴィンは即座に思考を回転させた。なんと答えればベストか、と思考を纏める前に、リリスが丁寧な、そして落ち着き払った口調でこう答える。
「秘伝のエキスを混ぜた、滋養酒ですわ。」
「東方にあるという、蛇の肉体を混ぜ合わせております。」
即座に、レヴィンもリリスの言葉に説明を加える。秘伝のエキスとは何かと問われて、リリスが都合よく答えるとは限らない。
「素敵ね。」
バニカはそう良いながら、もう一度、今度は深く堪能するようにワインをその口に含んだ。その表情が、満足を表すように薄い笑みを漏らす。そのまま、バニカはレヴィンが用意したナイフとフォークを手に取り、丁寧な手つきでブリオッシュを刻み始めた。その途中、バニカの眉間が妙な角度にゆがむ。そのまま、バニカはレヴィンに訊ねた。
「このブリオッシュを焼いたのは誰?」
「私でございます、コンチータ様。」
そのまま、緊迫を隠さないままに、レヴィンはバニカに対してそう答えた。もしや、お気に召さなかっただろうか、と真剣に、バニカの表情をレヴィンは伺う。その少し下、白磁のプレートの上ではどろり、と焼ききれていない、ゲル状となった小麦粉が刻まれた外壁から溢れだしている。
「面白い焼き方ね。」
素直に感心した様子で、バニカはレヴィンに対してそう答えた。そのまま、どうにか固形を保っている一切れをバニカはフォークに刺し、プレートに広がった生地を、まるでフォンデュを食すように浸してから持ち上げた。ぽと、と一粒、重力に耐え切れなかった生地がプレートへと落下する。それを無視してバニカは朱色に染まる唇の奥へと、ブリオッシュの切れ端を押し込んだ。そのまま何度か咀嚼し、思考するように首をかしげる。
「どうなさいました、コンチータ様。」
すかさず、レヴィンが訊ねる。
「お気に召しませんでしたか?」
続いて、リリス。その二人の表情を交互に眺めてから、バニカはブリオッシュを飲み込み、そして口を開いた。
「刺激が足りないわ。昨日の調味料、まだ残っているでしょう?」
「あれは。」
バニカの問いに、レヴィンは流石に驚愕し、或いは恐怖し、その喉元を震わせ、声を凍らせた。その間に、バニカが更に言葉を続ける。
「とても素晴らしい調味料だったわ。あの味、本当に癖になりそう。だからレヴィン、早く用意しなさい。」
最後は強い調子で、レヴィンですらも背筋をぞくりと、毛筆で撫でられたような艶かしい感覚を覚えさせた。その言葉に、渋々、という様子でレヴィンはベストの左ポケット、深めに作られてた空間に押し込んでいた小瓶を取り出す。改めて確認するまでもない。これは、毒だ。それも、猛毒だ。事実、この液体の一口でマイヴェイは死んだ。だが。
「あら、用意が良いわね。では、早く、レヴィン。」
待ちきれない、という様子でバニカはそう言った。期待と希望に満ちた瞳をレヴィンに向けながら。そのバニカに対して、レヴィンはただただ頭を下げた。もう、ここまで来たら食わせるだけ食わせるしかない。そんな自棄にも近い感覚すらレヴィンは覚え、そして答えた。
「では、ブリオッシュと、サラダに。」
上面は冷静に、いつもどおり。ただ内心には自棄糞、と覚えながら、レヴィンは丁寧に、透明であるはずの、だが光の加減か妙に青白く光る液体をバニカの食事に向けて振り掛けた。数滴ずつ、だが常人ならば即死する程度の量を。
「ありがとう、レヴィン。」
興奮するようにバニカは言った。そして、いそいそと両手を動かし、振りかけられた場所目掛けてナイフとフォークを差し向ける。そのまま、素早く切り取り、そして口腔へと押し込んだ。直後、バニカは仰け反り返った。がは、と苦しみを訴えるような声が漏れる。だが、昨日の一件で耐性ができたものか、苦しむ時間は数秒に過ぎなかった。そして、バニカはもう一度、昨日と同じように歓喜に満ちた声で言った。無邪気に、その瞳を少女のように輝かせながら。
「素晴らしい、本当にこの調味料は、素晴らしいわ!」
小説版 悪食娘コンチータ 第二章(パート5)
みのり「ということでコンチータ第十一弾です!」
満「なんかもう、グロい文章書くのに耐性が出来た見たいだぞ。」
みのり「コンチータ様じゃないんだから。。」
満「ちなみに、マイヴェイについて追記。」
みのり「13番目の料理人、ってことで、キリストの13番目の弟子、ユダとも重ねて書いています。」
満「ユダがキリストを裏切ったように、マイヴェイも毒を食わせることで裏切りを表現する・・つもりだったけどコンチータ様の胃袋の方が強かった。」
みのり「なんだかなぁ・・。本当にマイヴェイって噛ませキャラ・・。では次回もよろしくお願いします!」
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