『じゃまけんっ! ~望嘉大付属高校 ジャマイカ音楽研究会~』session:3


2番手は櫂人と拍のペア。曲種はスカで曲は Eric Morris『Humpty Dumpty』、後のロックステディへ移行する橋渡しになった曲と言われている。スカはそのアップテンポの裏打ちから、ジャマイカでは独立を祝う精神に対しての同調から席巻した音楽という見方もある。影響はジャズからで、ジャズの下地が以前からジャマイカにあったこともあり派生したものとも言われているが、発祥の流れに関しても諸説ある。曲自体は牧歌的な雰囲気があるがそうでもなく、どちらかというと巷で賑わう酒場で歌われる様な陽気さを持つ曲だ。
「ほれ、何ぼさっとしてんだ。早く引けよ櫂人」
留佳が揚々と箱を差し出した。
「・・・おまえには少し言い方というものがないのか」
櫂人はすでに諦めたのか、深く溜息を吐きながら大人しくくじを引いた。拍は櫂人の後ろでなかなか手を出せずに怯えていたが、櫂人に諭されソロソロと手を伸ばして1枚取った。そうして開かれたくじの中身に皆が一斉に注目した。拍の横で留佳がそれを覗き込み、にんまりと満面の笑みを浮かべてうれしそうにしていた。拍の衣装は『特攻服』。気の弱い拍にしてみれば「粋がってすみません」とひたすらに頭を下げかねない衣装ではある。実際拍の表情はそれを物語るように怯えを張り付かせていた。そのすぐ近くでくじを握り潰して震えている櫂人が居た。
「あ、あのぉ、櫂・・人・・・先、輩? 」
久美が恐る恐る尋ねると気が付いたのか引き攣った笑みを浮かべ、
「ははっ・・・、いやっ。大丈夫・・・ダ、イ、ジョウ・・・っ」
言葉は最後まで言い切れてなかった。その手の中から留佳がくじを奪い取るとさすがの櫂人も息を呑んで青ざめた。くしゃくしゃにされたくじの中身は『チャイナ服』だった。

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「あっはっはっはっはっ!!! 」
盛大に笑い声を上げたのは留佳だった。他のメンバーもさすがに笑いが隠せないのか必死に声を押し殺して震えている。理由は見て明らかで、拍はその体に似合わない大きめの特攻服紛いの衣装に身を包んでいる。それだけだとまだ可愛らしい雰囲気に留まってるくらいで、問題は櫂人の方だった。『チャイナ服』はその名の通り『チャイナ服』ではあるが一様にそうは言っても種類はある。ここで意図されるのは勿論男物である訳が無いというところだ。留佳が盛大に笑い飛ばした先の櫂人はとても綺麗な青紫色の花紋様があしらわれたロングチャイナ姿だった。ご丁寧に切れ長のスリットが入っていて、微妙なチラリズム加減が肉付きのいい脚をこれでもかと晒し上げていた。
「か、櫂人先輩っ、これも諦めの一つですよっ」
バレリーナ姿の漣が仲間を得たりという様な表情で笑いを噛み潰しながら言った。
「て、めぇ~・・・」
櫂人が漣の首を締めながら恥ずかしさにひたすら苦しみ悶えてるその横では、芽衣子が複雑そうな表情を浮かべながら笑いを押し殺している。然程抵抗無く櫂人が衣装に身を包んだのはひとえに留佳の諦めない性格を知っていたからに過ぎない。挙句下に制服のズボンを履いたままでも良かったのではないかと思うだろうがそれを良しとしなかったのは、
『ざけんな。チャイナの魅力はそのチラリズムとセクシーさにあるんだ』
という部長権限の発動によるものだ。櫂人は無言のまま苦々しげに漣を一瞥した。

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ディスクがセットされ、テストが開始される。単調なリズムと思わないでもないが、心地よいメロディーが漂い始める。それに合わせてセッションが始まる。衣装を抜きにして見ればテスト自体の内容は悪くない。セレクトされた曲も部のコンセプトに倣ってのものだから活動方針から離れてる訳でもないのだ。ましてや2番手の2人は部内一の実力者、全員が耳を傾けた。実家のジャズバーでかなり実践的な経験を積んでいる櫂人が選んだのはピアノ。曲で奏でられるピアノリズムは緩やかだが、櫂人はそれをアップテンポで軽快な調べに変え、曲自体の雰囲気を可愛らしいものへ変調させていった。それに合わせて拍が奏でるのはベース。拍の父はとても有名なベーシストでそれに習った拍の腕も相当なものなのだが、弱気な性格が災いし常に自信がない。よって周りはその腕の凄さを知ってはいても本人がそれを認めていない。しかし今の演奏を聴けば一目瞭然だった。櫂人のアレンジに対し、即座に対応出来るだけの実力を持っているのは部内では拍だけだ。リズムに合わせてベースラインを変え爪弾いていく。元々の曲が更に味わい深く奏でられていく様にその場の誰もが魅入った。
終わりのフェードアウトに合わせ、2人は眼で合図し、同じタイミングで響きに余韻を残しセッションは終わった。
「すごぃ・・・」
無意識に誰もが目の前の演奏に賛辞を零した。

to be continued...

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • オリジナルライセンス

『じゃまけんっ! ~望嘉大付属高校 ジャマイカ音楽研究会~』session:3

原案者:Keiji Imamura Black 様
お預かりした設定を元に書かせて頂いております。
拙いながらではありますが、楽しんで頂けたなら幸いです

さて3話目
段々文が短くなってる様ですが気にしない、気にしない
今回も曲は某●ikiと某●ou ●ube調べ
原案者様から教えて頂いたスカ曲を取り入れようとして、この曲は別に話で使いてぇなぁと先送る
今回は流れ的に各曲ジャンルの説明を少なからず入れたいなぁと思ったもので
特にスカやレゲェは知られているけど、ロックステディは私論ではあるが何となくあまり知られていない気がしたんで
教えて頂いた曲はすでにタイトル控えてるんで何時でもネタに使えるぜ☆

さておき、お次は3番手
はてさてどうなることやら( ̄ω ̄
現時点、すでに3回は読み直し校正したものの恐怖しかねぇや

閲覧数:112

投稿日:2012/05/23 22:25:54

文字数:2,038文字

カテゴリ:小説

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