廃校の理科室 白衣に夕映え
西の空は 赤く 赤く

橙のガラス戸を引いて
彼女は埃っぽい地球儀を手に取った


ニアリーイコールは似て非なるもの
地図や地球儀はそれを表さない 必ずしも

「 世界は平面でもいいんだよ 」と
彼女は非科学的なことを 言って 笑った

それは縮図に過ぎない(時として有用)



黒輪山の麓 夕闇の森
樹海烏の群が鳴く(およそ致命的)

散りてなお咲け 愚鈍華
わずか5分の1秒(空白でない、?)


大人は理想ほど賢くなく
子供は理想ほど清らかではない

「 みんな 心の底に子供がいるの 」と
地球を回しながら 言って 笑った

「 抱きしめてあげてね 」
「 温めてあげてね 」
「 ずっと 一緒にいてあげてね 」と

遺言のように 言って 笑った
鳥篭に包みたくなる 儚さで(黒板の傾きたるや!)



日没と涼風、(定理)

それは試験管のヒビ、あるいは線香の香り、(疾患の可能性も)

星の砂は散るもの、(疑問は残る、)

電球は灯さず、また灯してはならない、(確証のある)



この校舎もあのフェンスも
1000年経てば廃墟と化すだろうに

不本意に生まれ
不条理に死なねばならない(これは走り書きのようなもの)

彼女も例外ではなく(仮定とする)
いずれ屍となり やがて


「 ねぇ 私 幸せなの 」と


そうして 彼女は地球儀を
抱いて 笑って  一粒 泣いた


放課のチャイムは鳴らない

恐らくは 永遠に

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

無題

閲覧数:125

投稿日:2016/07/19 05:27:24

文字数:632文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 春野 雪

    春野 雪

    ご意見・ご感想

    黒輪山てw w
    すごく素敵な文章なのに黒輪山。
    素敵すぎる!

    2016/07/23 19:38:49

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