街中の尾行なので、なかなか隠れるところが少ない。そこで...。

まっすぐな道の時は、十分に距離を取る。
そして、相手が角を曲がったっときに、その角の手前まで急ぐ。

そんな感じで、リンちゃんと駿河ちゃんは、後を追い続けた。
それでも、だんだんとサナギちゃんとの距離が出はじめている。

見晴らしがいい道などで、隠れる車や木や、建物などがない所、近づきにくい。
リンちゃんはイライラした。

でも、不思議なことに。
サナギちゃんは時々、立ち止まる。
そして、空を見上げたりする。

それを見て、駿河ちゃんは言った。
「やっぱ、あの子、空模様で立ちどまってるよ」
「そらもよう?」
リンちゃんは、首をかしげる。

「月が見えると、周りを見渡したりするんだ。用心深くなるのかも」
駿河ちゃんは、つぶやいた。
「立ち止まってくれるからさ、見失わないで済むわね。へへっ」


●まわりに注意しなさい

サナギちゃんは、しばらくあたりを見回した後、また歩き出した。
曲がり角のこちら側に隠れて、それを見つめる2人。

「たしかに、昼間なのに、けっこう目立つよね、あの白い月が見えると」
リンちゃんは、空を見上げて言う。
「でも、なんで?」

「...暗示だよ。多分。月を見ると、用心深くなる。」
駿河ちゃんは腕を組む。
「“まわりに注意しなさい”、っていう暗示とかさ」

リンちゃんは聞く。
「そんな暗示、誰がかけたの?」
「わからないけど」
「気持ち悪いね。遠隔操作されてるみたい」

そう言って、向こうを行くサナギちゃんの背中をみつめる。
「うん、でも学校で話してた時も、なんか“上の空”の感じがあったっけ」


●完全に私の勘だけど

サナギちゃんは、だんだんと町のはずれの方に向かっていく。
着かず離れず、その後を追う2人。

「ねえ、やっぱり月光企画の方に向かってるのかな?こっちの方にあるの?そこ」
リンちゃんの問いに、首をかしげる駿河ちゃん。
「うん、私もハッキリは知らないけど。たしかこの辺に、その会社の何かがあると聞いたような...」

リンちゃんはちょっと、拍子抜けした。
「ような?ちょっと、頼りないなぁ」

配送用のバンのかげに隠れて、サナギちゃんを目で追いながら、駿河ちゃんは言う。
「暦さんから聞いた話で、今までのいきさつを、振り返ってみたの」
つぶやくように続ける。
「あなたとサナギちゃんが、プロモーション・ビデオの撮影中に、変な目に遭った」
「うん」
「そして彼女の行くえが、2、3日わからない。でも、急に戻ってきた。そうでしょ?」
「うん」

「そこには、キット何かがある。完全に、私の“勘”だけどね」
駿河ちゃんは、ささやくように言った。
「サナギちゃんを操ってる何かがいる」(((( -_-)

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玩具屋カイくんの販売日誌 (283) 彼女を操るやつ

閲覧数:94

投稿日:2016/08/07 14:41:10

文字数:1,161文字

カテゴリ:小説

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