"Sew li-a uryu aryu-fe."
"私は唯生きていてほしかった"
わたしの国は小さな国ゆえに、外交は欠かせない。今は戦争など起きてはいないが、それは雪菫の武勲のおかげだ。遠く遠くまで広がるほどの実力を備えた兵がいる。それに合わせて政治面でのわたしの頑張りが、ここにつながってると思いたい。もちろん、大臣たちの助言なども大いに役立っている。
忙しい中で、やっと空けることができた1日。その日に彼女に会いに行った。できるだけ静かに訪れたかったが、それでも最低限の警備はつけておかなければという事で、ちょっとしたグループ行動になっていた。
「わざわざ賢帝様がこんな田舎にいらっしゃって……光栄ですよ。」
村長がにこにこと挨拶に握手を求めてくる。それにこたえつつ、心はすでにあの日わたしに向かってお辞儀をした時のあの顔でいっぱいだった。
「こちらこそ。それで、歌姫は……」
祝祭以来、彼女の活躍は『至上の歌姫』と言われ世間を騒がせている。わたしが予定を開けて、彼女に会いたいと村長に申したてたら、その夜には返事が届いていてびっくりした記憶がある。それだけ、彼女の存在は村にとって重要な存在なのだ。
「あぁ、あの子の元へなら、どれ。私が案内しましょう。」
「いえ。お構いなく。場所さえ教えていただければ結構ですから」
少し冷たい反応だっただろうかと思ったが、その感情も早く会いたいという気持ちにせかされてあっという間に霧散してしまっていた。
村長はそっけない反応に一瞬顔を渋らせたが、すぐに元のにこにこ顔に戻っていいですよ。歌姫のいるばしょはですね……、と説明を始めた。ここから少し離れたところで、ちょっと歩くのには辛い距離だった。そこで、いつも歌の練習をしているのだという。警護についてきた兵たちにそこへ向かうと告げ、向かう準備が整うのを待った。その間、どんどんと上機嫌になっているのに気付いてなんだか恥ずかしくなる。だけどもそれを浮わつくその感情を抑えようとは思わなかった。
しばらく、といってもほんの数分だったろうが(わたしにはとてつもなく長く感じられたが)準備が整ったと、連絡がきた。
"Sew li-a uryu aryu-fe."
"私は唯生きていてほしかった"
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或る詩謡い人形の記録 4 -賢帝の愛玩-
※この小説は青磁(即興電P)様の或る詩謡い人形の記録(http://tokusa.lix.jp/vocalo/menu.htm)を題材にした小説です。
ヤリタイホーダイ(http://blog.livedoor.jp/the_atogaki/)というブログでも同じものが公開されています。
こちらの方が多少公開が早いです。
始 http://piapro.jp/content/0ro2gtkntudm2ea8
前 http://piapro.jp/t/ql_T
次 http://piapro.jp/t/twLB
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