私達は悲鳴の聞こえた方へと走った。文字化けが出たんだろうか?だとしたら例の先輩が危ない?!直ぐに行かなくちゃ間に合わなくなっちゃう!
「先輩!大丈夫ですか?!血が…!」
「平気よ、少し切っただけだもの…。」
部室らしきコンクリートの建物に走った私達が見たのは、青ざめているイコちゃんと手の平を怪我した女の子が見えた。もしかしてこの人が幾徒さんが言ってた先輩?
「だ、大丈夫ですか?!保健室行った方が…!」
「誰よ、あんた…ウチの生徒じゃないわよね?」
「馬鹿!目立つなって言われただろ!」
「でも…怪我してるの放って置けないです!」
怪我をした先輩と、イコちゃんと、少し呆れ気味のクロアさんを見た。流石に言魂で治したりは出来ないけど手当て位は、と思って皆で半ば無理矢理保健室に移動した。クロアさんは気まずいから外の目立たない所で待っていると言って一人で何処かへ行ってしまった。
「へぇ、じゃあ聖螺ちゃん翔藍学園の生徒なんだ?」
「はい。お店手伝ったりしてるので部活はやってないんですけど…。」
「良いじゃない、私小さい頃はお花屋さんに憧れてたわよ?」
イコちゃんの先輩は芙花さんと言うらしい。手に痛々しい包帯を巻きながらも優しくて明るい笑顔を見せた。それを見てるイコちゃんも心配そうながらホッとした顔を見せる。これで後は文字化けから芙花さんを守ればきっと…。そう思った時不躾に保健室の扉が開いた。
「あっれぇ?何だ元気なんじゃない。」
「司籐…?」
「てっきり泣いてると思ったのに、図太いよね、あんたって。」
「ラケットケースにガラス仕込む位しか出来ない奴に言われたくないわね。」
先輩だろうか、いきなり保健室に入って来たと思うと明らかに喧嘩腰な口調で芙花さんに近付いた。途端に怖い顔でイコちゃんが二人の間に割って入った。け、喧嘩?!どうしよう…止めた方が良いよね?
「司藤先輩!もう直ぐ大会なんですよ!足の引っ張り合いよりやる事があるんじゃないですか?!」
「金魚のフンが生意気言ってんじゃないわよ!」
「きゃっ!」
「イコちゃん!…ちょっと司藤!いい加減にしなさいよ!」
「あんたは鼻につくのよ、ちょっと上手いからって偉そうに練習方法迄指図して!」
「私はあのままじゃ誰かが怪我をすると思って…!」
「親のコネでレギュラーになったくせにウザイんだよ!」
「なっ…!」
「あ、あの!もうやめて下さい!酷いです!」
「誰よあんた!部外者は黙ってて!」
その人は興奮状態で私に掴み掛かって来た。イコちゃんがうろたえながら必死で止めようとしてくれていた。この人、少し様子がおかしい…まさか文字化けの前触れ?
「…るせない…。」
「あ?何だよ?!」
「…知らないくせに…!私がどれだけ努力したか…どれだけ苦しんだか…何も知らないくせに!
好き放題…どい…つも…こいつ…も…ミンナ…消エチャエ…バ…!!」
「…芙花先輩…?」
「皆…みンナ…KIちゃえバイイ…!皆…居なクなレバ良いんダあああああAAAAaaaaaaaaaaa!!!!」
「―――文字化け…?!」
耳を覆いたくなる様な絶叫と共に、芙花さんの体は真っ黒に染まった。
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