[サンデーラブジェットジュースっぽいSS]演技?それとも・・・[健全です]


ねぇ、僕はめーちゃんにとってなんなの
かわいい弟?なんでも言うことをきく子分?
それとも・・・


「メイコさん入りまーす」
「メイコさんおはようございます」
「メイコさん初めてのPV撮影ですのでよろしくお願いします」

私がPV撮影のオファーを受けたのは今回が初めてだ。
歌を歌うのは自信があるが、旧式のボーカロイドである私はミクやレンのように演技スキルは持ち合わせてはいない。
正直、断ろうと思っていたが、監督の熱意に押されて了承してしまった。
(生のままの君を撮りたいって言ってもね・・・)
手にした台本に目を落とす。
幸いセリフはない。書いてあるのは絵コンテと簡単な演技指示のみ。
自然な演技を見たいとの監督の意向で共演者との打ち合わせもなかった。
(これってやり過ぎでしょ・・・)
「メイコさん、衣装合わせお願いします」
「はい、今行きます!」

(こ・・・これは・・恥ずかしいいいい!)
衣装部屋の姿見で衣装の確認をするが、あまりの恥ずかしさで赤面してしまう。
花柄のチェニック、フリルの着いたスカート。
ミクやリンなら似合うだろうが、普段こういった格好をしないためか「かわいい」とか「少女っぽい」といった感想はなかった。
いつもの格好の方がいい。
「あの・・・これは・・・」
衣装を替えてもらおうと話すが、不意に掛けられた声で遮られてしまう。
「めーちゃんすっごい似合うわ~~」
「監督・・・衣装・・」
「すっごい似合ってるでしょ!やっぱり物がいいと違うわーこの調子で撮影おねがいね」
ー押しきられてしまったー
女性監督で安心していたがこの人は押しが強い。
私は諦めることにした。私ひとりが意見をしてもこの人の性格だ、きっと泣き落しでも使いかねない。
「今日の相手役もスタンバっているわよ!」
「カイトさん入りまーす」
「カイトさんおはようございます」
(えっカイト!)

「PV撮影?また裸マフラーでしょ・・・」
僕はいちようボーカロイドで歌の仕事をしているが、最近は裸マフラーや女装とかお笑いの仕事が多い。
そのため「仕事を選ばないお兄さん」、「女装が趣味の変態」とか言われたりする。
今回のPVは久し振りの「真面目な」PVの仕事なので受けた。僕だって仕事を受ける自由はあったりする。
(自由はあるだけなんだけどね・・・)
セリフはない。書いてあるのは絵コンテと簡単な演技指示だけ。
自然な演技を見たいと共演者との打ち合わせもなかった。。
(でも、共演者がめーちゃんって・・・・)
「ちょっとカイト!なんでここにいるの!」
「めーちゃん何そのカッコ?」
「見るな!バカイト!」
反射的に叩く。
「はいはい、痴話げんかはそこまでにしてあとは撮影でね」
監督に押され、私とカイトはスタジオに入る。

今回は私の以前歌ったことのある曲のPVだ。
相手は悪い男だというのに、その男を好きになった女の心情を歌った曲だ。
撮影はスムーズに進んだ。
こんな格好でカイトと一緒の撮影。演技よりも恥ずかしさが先立つ。
そんな私のことを知ってか知らずか監督は・・・
「いいよめーちゃん!恥じらいがでてる!艶が滲み出してる!」
・・・ノリノリだ。
「さあ!次は背後から手を回してめーちゃんをカイトが抱きしめる!」
カイトが監督の指示通りに私の背後から抱き締める。
カイトの逞しい腕が私の体に触れる。
「ちょっ!かいと・・・」
「大丈夫、演技だから・・・」
カイトの息が髪にかかる。
カイトのことはいつもかわいい弟分と思っている。
成長した今でも、一人の男として見たことはない。
でも・・・・

背中越しにカイトの熱い胸板があたる。
「めーちゃん・・・」
「カイト・・・」
心臓もない、機械の体なのに体が熱くなり息が荒くなる。
どうしよう・・・あたし壊れるの?
あぁもうだめ!
ぷち
ぷち
ブチィィィィ!
何かが私の中で切れるが聞こえた。
「くすぐったいんじゃぁぁ!このバカイト!!!!!!!!」
「これは撮影なんだってめーちゃ・・・・ひでぶ」
やっちゃった
カイトは私の右ストレートを食らい、三メートル程吹っ飛んでいた。
「ごめん監督・・・」
私は監督からの怒声を待った。が・・・
「いい!今のめーちゃんの怒りの表情イイ!ラストは頂きね!」
必要なシーンを撮り終えてあったので、撮影はお開きとなった。
「めーちゃん酷いよ・・・ガクッ」
カイトをそこに残して。

数日後
ボカロ家にて
「ただいまー」
返事がない。いつもはミクやリンが「ネギは買ってきてくれた」、「ミカンはあるのー」と言うはず。
私はリビングルームに入ってみると・・・
「めーちゃんかわいい!」ミクの声だ。
「レンは見ちゃダメなのー!AVは見ちゃだめなのー!」・・・AV?
「リンこれはPV。AVじゃないよ。」PV・・・もしや!
リビングではミク、レン、リンがテレビを囲んでいる。そしてテレビに映し出しているのは!
”あの”PVだ。
「あ、めーちゃんお帰り。監督がこの前のPVを送ってくれたんだよ。せっかくだからみんなで見ようと・・・・めーちゃん?」
私は無言で空の一升瓶を掴むと・・・
「いけないコにはおしおきよね・・・・ねぇカイト?」
「めーちゃん話せばわかる!わかる!」
「てめぇに明日を生きる価値はねぇ!!!!!!!」
「ひでぶぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」

あの時のドキドキはきっと私の気の迷い
そう、きっとそう・・・・





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[サンデーラブジェットジュースっぽいSS]演技?それとも・・・[健全です]

やっちゃった!

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投稿日:2008/11/26 21:29:15

文字数:2,290文字

カテゴリ:小説

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