※注
wowakaPさまの「アンハッピーリフレイン」を聞いているうち
頭の中をぐるぐるし始めた自己解釈です。
吐き出したくて仕方がないのですがPV作る技術もないので小説で。
多少の流血表現がございます。妄想も暴走しております。ご注意をば。
読んだ後の責任は負いかねます。
“少女”はゆるく唇を曲げ、“彼”を見下ろしていた。
「まさか私の代であんたを捕まえられるとは思わなかったわ、“蛙の王様”」
「どうかな。“当然”って顔してるぜ、“ハートの女王”」
“少女”―――“ハートの女王”は目を細め、愉快げに笑う。
戦いの激しさを物語る、返り血に塗れたぼろぼろのドレス。元は純白だったことなど、最早誰にもわからない。幼さの残る顔立ちとは釣り合わない凄惨な姿だが、それは“蛙の王様”も同じだった。成長途中にある細い体格。異様なのは、口元だけが見える、蛙の着ぐるみ頭を被っていることだ。彼の国の民は全員これを被っていることから、“蛙の王様”の通り名がついた。
いっそ不気味ささえ感じさせる容姿に、ハートの女王は笑顔を浮かべたまま、銃を蛙の王様につきつける。兵によって縛り上げられた彼に、銃口から逃れる術はない。
沈黙。
張り詰めた空気と、絡み合う視線。
やがてハートの女王は、引き金をひいた。銃弾は発射されることなく、かちんと空々しい音だけが響く。蛙の王様の、涼しげに引き結ばれたままの口元を見つめ、ハートの女王はドレスの裾を翻した。
「せっかく捕まえた人質よ―――殺すより利用する方が価値がある。撤退せよ!」
少女の声が戦場に響き渡る。あっという間に兵は撤退を始める。じき、戦場には敵軍の屍だけが残される。ハートの国の軍勢に踏みつけられる屍を、黙って見つめていた蛙の王様だが、不意に兵士に縄を引っ張られ、地面に倒れ込んだ。兵士はあからさまに舌打ちをして、「馬に引きずらせるか」と毒づく。ハートの女王は眉を潜めた。
「馬鹿言わないで。利用する前に死なせちゃ意味がないのよ、丁重に扱って」
「ですが女王様。こいつらに一体どれだけ仲間が殺されたか―――」
「ならば尚更、くだらない死に方をされるわけにはいかないでしょう。……もういいわ、私に寄越して」
兵士の手から縄を奪い取り、ハートの女王は歩き出す。馬車の荷台に蛙の王様を押し込めてから、御者に城に戻るよう指示を出す。蛙の王様の目の前に座り、無遠慮に彼の姿を観察する。
「初めて近くで“蛙の王様”を見たけれど、随分とまあ……、……間抜けな姿ねえ」
「……あんたに言われたくないな」
「どうせ三十日の命だもの。ひたすら戦うだけの三十日間なのに、綺麗な格好したって虚しいだけでしょ」
「まだ続いているのか、あの頭のおかしい法律は」
彼の顔のパーツで唯一見える、その綺麗な唇が、初めて苦々しげに歪む。ハートの女王は静かに蛙の着ぐるみ頭を見据え、「あんたの国だって人のこと言えないと思うけれど?」と言った。
* * *
ハートの国。
城壁に囲われ、隔離されたその国は、独自の法律で支配された国である。ひとつ、王位を継ぐのは女性。しかし、一人の人間が女王を務める期間は三十日と定められている。ふたつ、期限が過ぎれば、女王は必ず、どのような形であれ、死ななければならない。
宿敵は、蛙の国。
思い出したように現れてはハートの国に戦を仕掛けてくる。気の抜ける蛙の着ぐるみ頭を被っていたとしても、やることは殺戮と略奪。全く笑えない冗談だ。
ハートの女王の役目はただ一つ。蛙の国の襲撃を、阻止すること。
ただそのためだけに存在する。
アンハッピーリフレイン 自己解釈してみた【01】
一日で終わらせる!
と謎の情熱を持って、リアルタイムで書き殴っております。
誤字脱字がありましたらばそっと教えていただければ幸いです。
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