部屋に入ったものの、何を話したらいいのか分からない。
「ルカ」
「な、何?」
私の名前を呼んだのは、意外にもレンじゃなくてがくぽ。
「なんで泣いてたの?」
「え・・・・」
メイトとマナが・・・・なんて言えるかぁ!!
「ルカさんは、彼女のいる人を好きになっちゃって泣いてたんです」
カイコが何も言えない私の代わりに言った。
「え・・・・」
時が止まったかのようにレンが凍りついた。
「だ・・・誰?」
「俺?」
「んなわけないでしょう!誰が神威さんなんかにルカさんが・・・・」
冗談交じりに言ったがくぽにカイコが本気で言ったもんだからがくぽはレンと同じように凍りついた。
「え、何。巡音ルカ。お前はそんな事で泣いてたのか!俺だってめーちゃんに何回フラれたことか・・・」
「お兄ちゃんは黙ってて!お兄ちゃんなんかにルカさんの気持ちなんて分かるわけないでしょ!」
確かに分かってたまるか。こんなヘタレなんかに（ボソ
「でもさ、それで泣いてたって仕方ないじゃない。泣いてるうちにその二人はどんどん進展していっちゃうのよ～?」
秋音メイコが爪をいじりながら言った。
「それは・・・」
分かってる。
泣いてうじうじしたってウザがられるだけだし、周りの人も絶対不快に感じる。
そしてなにより二人の仲はどんどん縮まって、しまいには私の入れない世界をつくっていくだろう。
「やっぱアタックのみ・・・じゃないかな。あたしもそうだったし」
鏡音リンは言う。
確かに鏡音リンは私からがくぽを奪った。
奪ったっていう表現はあんまりよくないけど。
「でもその彼女は私の友達だし・・・」
「あ、そーなんだ・・・」
彼女が知らない人だったらまだしも、彼女がマナじゃ・・・・
「ねぇ、ホントにホントに誰?」
レンが私の目の前に顔を近づけた。
「レン君、そんなに気になるの?」
初音ミクはまた恐る恐るレンに近づいて言った。
「うん。誰?」
「それは・・・・」
「あ、そーいえばメイト!」
え!?
秋音メイコが突然メイトの名前を口にする。
（ば、バレた!?）
まさかね!?
「あいつどーしてんのかしら・・・あたしに何の連絡もないし、どっかほっつき歩いてんのかしら」
な、なんだ・・・
そういえば、秋音メイコとメイトはいとこで苗字も一緒なんだっけ。
「ごめんみんな」
『へ?』
全員一斉にごめんと言ったレンを見る。
「なにがゴメンなの?」
「ルカと二人にして欲しい」
え?
「わ・・・私?」
「どうしても聞きたいことがある」
レンは私を見つめて言った。
「じゃあ、あたし達は表で待ってるから、終わったら言って」
「私も待ってますねルカさん!」
「ちょ・・・・」
そう言ってみんな行ってしまった。
「ちょ、ちょっとみんな・・・」
「ルカ」
ドン!
頭を床に打った。
ん?
（床に・・・?）
「え!?」
私はレンに押し倒されていた。
「ごめん・・・痛かった?」
「ひゃっ」
額を触られた。
「ねぇ」
「な・・・何?」
青い瞳の中に私が映る。
「ルカの好きな人って、誰?」
私の目元に雫が落ちてきた。
青い瞳の中は、涙が溜まって海のようだった。
「誰?」