ツクヨミ少年は、ベニスズメさんと少し会話を交わして、
リンちゃんと駿河ちゃんを招き入れるように、一室の中に入れた。

さほど広くない部屋には、壁に向かっていくつかの机と机が置かれていた。

「あ、サナギ」
室内を見渡して、リンちゃんはつぶやいた。

端にある机の前の椅子に、目をつぶってサナギちゃんが座っている。

「いま、サナギさんと、お話をしてたところです」
ツクヨミ君は、そういうと、立っている2人に、座るようにすすめる。
「ささ、どうぞ」

言われて、リンちゃんと駿河ちゃんは、部屋にある来客用のソファの椅子に、腰かけた。


●生意気そうな少年

「リンさん、この度はお仕事、ありがとうございました。お疲れ様でしたね」
ツクヨミ君は、そういうと2人の向かいのソファに座った。
彼の顔を見ながら、リンちゃんはぺこりと頭を下げた。

「それから、いろいろと、何かご迷惑をかけちゃって」
そう、彼はちょっとすまなそうに言う。

そんな彼の顔を見ていると、リンちゃんは不思議な気持ちになった。
この子が、月光企画という、大きな会社の「会長」だなんて。

何も知らない人が見たら、ただ、生意気そうな少年が、
おませな言葉をしゃべっている様にしか見えないだろう。


●眠っているのだろうか

そこへ、ベニスズメさんが2人のために、お茶をいれてきてくれた。
すすめられて、駿河ちゃんは言った。
「すみません、突然こんな、その、お邪魔しちゃって」

2人は、ここに来たサナギちゃんの後を、尾行して来たわけだが。
そんなことは、あやまらなくても、ツクヨミ君たちは気づいているだろう。

「いいんですよ。心配もかけたんだから。さ、冷めないうちに」

言われてとりあえず、お茶をすすって、ホッと一息つく。

向こうの机の前には、相変わらず、サナギちゃんが座っている。
目を閉じたままだ。眠っているのだろうか。

リンちゃんは、ふと、ソファの前にある応接机の端っこに目をやる。
そこに、牛乳ビンくらいの大きさの、透明な小ビンが置いてある。

中に、少女のような形の、フィギュアのようなものが、入っていた。


●だんだん、元気になってきてますよ

「これ、なんだろう。フィギュア?が入ってる」
目を凝らして、それを見つめた。
「サナギのフィギュア?」
瓶の中の少女の顔は、サナギちゃんにそっくりだった。

駿河ちゃんも、不思議そうにそのビンを眺めている。

2人の様子を見ながら、ツクヨミ君はちょっと笑って、言った。
「いま、そちらにいるサナギさん。だんだん、元気になってきてますよ」

リンちゃんは、顔を上げて尋ねた。
「サナギはそこで、何をしてるんですか?」
「今にわかりますよ」

そんなやりとりが、聞こえたのかどうか。
向こうで椅子に座っていたサナギちゃんが、「あ」と声を上げた。

彼女の方を見た2人に向かって、サナギちゃんは驚いた顔をした。
そして、ちょっと手を挙げて「リン?」とつぶやいた。

その時。駿河ちゃんは見た。
小ビンの中のフィギュアが、手を挙げた。サナギちゃんとまったく同じ動作で。

「え?」Σ(゜д゜;)

ライセンス

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玩具屋カイくんの販売日誌 「透明な小ビン」

不思議な小ビン。いったい何でしょうか。

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投稿日:2016/12/24 13:42:13

文字数:1,311文字

カテゴリ:小説

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