無知ほど、世の中で罪な事はないとか誰か言ってたけど。
全く持ってその通りだと、オレも思う。


「ん~…」


ベッドの中、背中の後ろから聞こえる声にドキッとした。
オレより高いよく似た声の主は、オレと背中合わせに眠っている。

背中合わせの体温のせいで、オレの鼓動は早鐘のごとく鳴り響く。

そんな事には気付きもせずに、オレの片割れは寝息をたてていた。


寝れるかつーの!!
あー…なんでこんな事になってんだぁぁ!!


事のほったんは、かれこれ2時間前にさかのぼる…



「レーン!起きてるぅ?」


時刻は午前0時を過ぎた頃、ベッドに入ってPSPをやりながら寝ようと思った矢先に部屋のドアがノックされた。

いつもなら勝手にずかずか部屋に入って来るのに、珍しく扉の向こうで声がした。

何となく嫌な予感はしたけど、無視するのも気が引けたので返事をする。


「いちおう起きてるけどー。」


返事をすれば、すぐに扉が開く。
開いた扉の間からリンは顔を覗かせる。
気まずそうに、恥ずかしそうに覗かせるトコを見れば、何を言いたいか大体察しがつく。


「あの~…。」

「どうせ怖い本とか見たんだろ?」

「ち、違うよ!!べ、別に怖いからとかじゃないんだからっ!!」


図星を付いた様で、リンは焦り気味で否定をする。
まったくもって解りやすい。


「ただ…眠れないから、レンと一緒に遊ぼうと思って!!」

「遊ぶよーな時間じゃないけどなっ!!」

「だ、だけどぉ…!!」


呆れ口調でツッコめば、言葉に詰まってすぐに頬を膨らませる。
あぁ…このまま行くと泣きだすパターンだ。
本当にそれだけは困る。
泣かれると、どうしていいか解らない。
なので折れる事にした。


「解ったよ!眠くなるまで付き合うよ!」


眉を上げてそう言えば、急に花が咲いた様に笑顔になった。


「さっすがレン!!」

「でも寝る時は自分の部屋行けよな!!」

「分かってるよぉ!
ねっねっ!リンもそれやるぅ!!」


とか言いながら、ベッドの脇にリンは座った。

オレは寝転びながら、嬉しそうなリンの顔を見て、満足そうに口元が緩んだ。




そこで許すから、こーなるんだよ!
いつもいつもこのパターンじゃん!!

何ニヤけちゃってたの、オレ!!


その後すぐに『寒い』とか言って、リンは布団に潜り込んだ。

潜り込んだと思ったらこの状態。

正に蛇の生殺しとはこの事だろ!!
てか、どんだけ無防備な訳!?

つーか襲われたって文句言えない状況って、解ってんの!?

ちょっとリンさん!
オレこー見えて思春期なんですよ!!知ってますか!?


てか、お前も思春期だろ!?

えっ!何!?
まさかこれ誘ってんの!!
リンもその気的な…

って、ない!ないない!!
どんだけ自分に都合のいい、脳内回路してんだオレ!!

あーはいはい!!
どーせヘタレですよっ!!

あーもうっ!!!!

ウダウダ駆け巡る思いを払い除ける様に、堪らずオレは布団をまくるとベッドを出ようと足を出す。

「レ…ン」


ポツリともらす言葉に思わず振り返ると、リンが薄目を開けていた。


「ご、ごめん!起こした!?」


反射的に謝る。
オレのベッドを奪う女に、謝る必要なんてないはずなのに。
起き上がりかけたオレの服の端を掴まれる。
そんなオレにヘラッと笑うと、


「だぁいスキ…だよ…」


なんて呟いて目を閉じた。
明らかに寝ぼけながら言うそれは、普段以上の数倍の威力を持っていた。
顔に火がついたみたいに熱い。
そんな顔を片手で押さえ込む。

あぁ~本当に無知は罪だ。
ズルすぎるだろ…マジで。

こうやってドツボにはまるんだよ。


あー…もう、徹夜だなこれは。



~Fin~

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

IgnoranT is SinfuL


厨二なレン君の心の葛藤なお話。
ほのぼのギャグ。

閲覧数:183

投稿日:2010/10/28 15:15:45

文字数:1,581文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました