劇を見て夏を見て
月を見たっていつも観測者で
そしてただ指を差し
あーだこーだ言うことしか
あなたから聞いた話は
大抵「君」がいなくて
然るに微かに見えたあなたも
夏へ消えて行く
あの空みたいな
あの花みたいなって
外を見ては何かを模して
夏、君を想って
春、さよならしたって
あなたが描くであろう空を
まず夏に思い入れなんてない
ただただ暑いだけだ
空で歌えないのに詩を歌う
端の折れた歌詞カードを
机の隅っこに置いて
あの人みたいに
あの映画みたいにって
なれるはずないのに夢見て
何度模写したって
何度読み返したって
そこに僕はいない答えはない
なぜだろう
好きでもない花の名前を
こんなに知っているのは
なぜだろう
好きでもない夏の
酷く憂い曲が好きなのは
後ろに背景があって
真ん中に誰かがいる
ただその一枚の絵が
それだけが僕をこうさせるんだ
心ここに在らず
心どこにも在らず
こんな日はあなたの曲を
こんな日だからこそ
夏歌う者は冬泣くと言うが
きっと僕は冬も歌うだろうさ
梅雨、潤しても
初夏、心枯れるから
あるはずのない
アベリアに代わる何かを
ずっと
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