学校到着。
最後の一枚。あたしは何を撮るつもりなんだろう。
最後の1枚に物凄く大切な“モノ”を撮ろうとしていた。
それが“物”なのか“者”なのかわからない。
「あ」
目の前を坂木が通った。ひとりで。
キャリーバッグを引いている手とは反対の手で、使い捨てカメラを構えて坂木に合わせる。
あたしはゆっくりと
指先に力を込めて
シャッターボタンを――
押せなかった。
わからないけど。
何でか知らないけど。
あたしはカメラのボタンを押せなかった。
押さなかった。
ガシャン。
カメラが手から落ちた。
ポロリと音がたちそうな程にあっさりと。
頬を体内濃度と同等の塩水が濡らした。
――――――
帰ってから母親から「使い捨てカメラは?」と聞かれた。
ポコンとカメラを渡す…つもりだったけど「あぁ、ごめん。捨てた」と言って渡さなかった。
ネジをぐるぐると巻き、見慣れた家の天井を撮った。
カメラは死にました。記憶だけを残して。
ソファーに座っていたあたしはゴミ箱に近づいた。
ゴミ箱にキチンと用途通り、いらない物を捨てた。
ゴン。
あ。
そういえば。
使い捨てカメラって不燃物だっけ?
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