狂気に満ち溢れたその叫び声と共に、苦音シクという少女の両手に握られた二丁の大型拳銃が火を噴いた。
 「ッ!」 
 一瞬のみ視界に入った鉛の弾丸が俺の前髪を僅かに抉り取った。 
 俺は瓦礫に身を隠し、ボルトガンを引き抜きチャージレバーを引いた。
 彼女も機械だ。これを一発でも当てれば、たちまち気絶するだろう。
 しかし、俺の分が悪すぎる。
 手元にあるのは、弾数も残り少ないボルトガン。しかも、撃つたびにコッキングが必要なのだ。
 対してあちら側にあるのは・・・・・・。
 「どこ見てんだよ!」
 巨大なアンドロイドから俺を見下ろすミクオの声。
 それに気付き顔を上げた瞬間、眼前に二つの銃口が迫っていた。
 紫と桜色の瞳が、完全に俺を捉えている。
 「ハァッ!!」
 決死の行動。 
 俺はその片方の銃を蹴り飛ばし、ボルトガンの銃口をシクの胸へ向けた。
 バッテリーの位置。これが決まれば、君は沈黙する。
 だが既に俺の額にはレーザーポインターの赤い光点が突きつけられていた。
 俺は引き金にかけられた指から力を抜き、超音速で飛来した無数の弾丸から身をかわした。
 彼女の両手には、再び二丁の拳銃が握られている。
 俺は彼女から一気に遠ざかり瓦礫に身を隠した。
 やはり分が悪い。
 見たところ45口径のオートマチック。僅か数秒でかなりの連射をしていたところから、バーストか、フルオート機構のどちらかが搭載されている。
 グリップ下まで延長されたマガジン。装弾数も多いだろう。
 真っ向から戦いを挑んでも勝算は無いに等しい。
 俺は瓦礫に身を隠しながら、足音を消し、彼女の死角へ詰め寄った。
 「タイトさーん。いいこと教えてあげるー!」
 ミクオの笑い混じりの声で、シクが俺の存在する位置を確認した。
 瓦礫が無数の弾丸によって削られ、抉られていく。
 俺は次の瓦礫に転がりこみ、体勢を立て直す。
 それを赤い光点が追いかける。
 「あのねー、シクちゃんの弾、二つあわせて全部で八十二発だからー。」
 八十二発・・・・・・片方につき四十一発か。
 マガジンに入っているのが八十発。チャンバー内に一発。
 マガジン装弾数四十発の拳銃か。聞いたことが無い。
 彼女にボルトガンの照準を合わせようとしたそのとき、彼女も瓦礫の中に身を隠した。
 恐らくリロード。なら、今が最大の好機だ!
 俺は彼女が消えさった瓦礫のほうへ飛び出した。
 そしてその瓦礫の向こう側に回り込み、照準をあわせる。
 確かにリロードだ。それは、余りにも無防備な状態。
 「そこだ!!」
 マガジンの交換を行っていたシクに、蒼白の電撃が迸った。 
 「あぁっ・・・・・・!!」
 彼女は悲痛な声を上げて大きくのけぞったが、すぐに姿勢を元に戻すとリロードが終わった銃を俺に向け、数発放った。
 何だと・・・・・・気絶しない?
 耐性があるというのか。
 「なにやってんだよ!さっさと殺せ!!」
 ミクオから野次が飛ぶ。
 今発射されたのは二十発。なら、今は六十発。
 次のリロードで、決着をつける。
 今度は彼女が、俺の視界から消え去った。
 どこだ・・・・・・どこにいる・・・・・・。
 「タイトさん後ろ後ろ!!」
 「!」
 どこからとも無く飛来した連続の発砲音。それを紙一重で回避し、すかさず発砲音のした方向へ電撃を放つ。
 今のが二十五発。あと、三十五発。
 そのとき、ボルトガンから小さくアラームが鳴ったことに気がついた。
 チャージレバーが引ききった状態から戻らない。
 弾切れか・・・・・・?!こんなところで!!
 「ちぃッ!!」
 そうしている間にも、俺の姿をレーザーポインターとが追尾し、紫と桜のオッドアイが捕捉していく。
 俺も彼女の隙をうかがおうと瓦礫から顔を出した。
 が、すぐに彼女の照準に捕らえられた。
 次の瞬間、彼女の銃が眩い光を放ち、弾丸の豪雨が俺に向け降り注いだ。
 無数の閃光がレーザーのように俺の数十センチ先を駆け抜け、その豪雨にさらされた瓦礫が、粉々に粉砕され、破片が空中に散っていく。
 俺は全速力でそれをかわし、また瓦礫に身を隠した。
 フルオートに、この威力・・・・・・まさかマグナム弾か?
 ならば、どこに当たろうと俺の体も粉々に吹き飛ぶということか。
 恐らく、あと、五発。
 「タイトさーん。いいものあげる!!」
 ミクオが俺に向けて何かを投げた。  
 それを掴み取ると、それはボルトガンのバッテリーだった。
 どういうつもりなんだ・・・・・・。
 「ほらタイトさん!!前!!」 
 視線を前に向けると、銃を構えるシクの姿が見えた。
 あの時の電撃が利いているらしく、足がふらついている。
 そして、五発の弾丸が発射されたが、弾丸は身をかがめた俺の頭上を飛び去って行った。
 その瞬間、拳銃のスライドが引き下がったまま戻らなくなった。 
 ホールドオープン。君の手持ちはカラだ。
 おぼつかない足取りで、瓦礫の中へ身を隠す。
 今だ!!
 「タイトさん!チャンス!!」 
 こいつどっちの味方だ。
 俺はボルトガンの空になったバッテリーを抜き取り、ミクオから受け取ったバッテリーを差し込んだ。
 充電済み。発射可能回数二十発。
 チャージレバーを引き、発射可能な状態へ。
 一気に、彼女が身を隠した瓦礫に回り込んだ。
 見つけた!
 またしても、彼女は無防備な姿をさらしている。
 俺は間髪いれずにボルトガンから電流を発射した。 
 「きゃっ!」 
 彼女の両手から、拳銃とマガジンが零れ落ちた。
 だがまだ気絶していない。
 もう一発。
 「うぁあっ・・・・・・!」
 彼女はその場に跪き、激しく呼吸を繰り返した。
 これ以上は、心が痛むが・・・・・・。
 俺はボルトガンの発射機能を切り替えると、銃口を彼女の肩に押し付けた。
 「うああぁッッッッ!!!!」 
 その瞬間、彼女の体が激しく痙攣し、そして、バランスを崩した。
 俺は彼女の体を受け止め、その場に寝かせた。
 「な~んだ。弱っちいじゃん。」
 「ミクオ・・・・・・貴様・・・・・・!」
 俺とミクオの、怒りと笑みの視線が衝突した。 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

SUCCESSORS OF JIHAD 第九話「GUNs LOVEGAME DARKNIGHT」

「GUNs LOVEGAME DARKNIGHT」(short ver)
Song by SIKU KUON


視線が重なるたび、感じるの
彼方にその気があるって 
舐るように その瞳が

増殖する意志 みなぎる何か
私もその気になって
熱くなって 体が

闇に包まれ 踊らされて そして 熱くて 
今すぐシたいよ
我慢できない

向け合う狂気と銃口が 私と彼方を熱くする
これが私の愛の証 どこまでも朱に染まって 私の色に染まって 
彼方も私を愛して どこまでも貪って 私の心(しん)を食らって
それでも夜は終わらない
混ざり合う血肉が 私と彼方を離さない
彼方の欲望を受け止めて 私の体が満ちていく
私の愛に答えるように 彼方が私を貫いて
なおも夜は終わらない

鋭く撃ち付けてshoot me
心まで貫くpresent death

体を愛し合う快楽もっと激しくlovegame

食らい尽くしてeat me
壊させてdestruction
 
心の奥まで愛させて互いに貪るlovegame

熱く感じるkill me
もっと感じてyou are doi

溶け合うほどに愛し尽くす引きずり込まれてdarknight!!!!

閲覧数:172

投稿日:2009/05/31 23:39:57

文字数:2,561文字

カテゴリ:小説

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