タグ「初音ミク」のついた投稿作品一覧(10)
-
頬に 触れるものは
はらり と舞う桜(はな)
星が 煌めいても
瞳(め)には 映らない
永き日々を経て満ちし今宵の月も
叢雲(むらくも)ただひとつで隠れんぼする
君だけを慕いし 玉響(たまゆら)の過去(とき)が揺らめいては
枝垂れの枝の下(もと) 佇んでいる
(ひとしずく)
哀しみを湛えてひとり...落涙の桜
-
ふと紡がれた音楽。
滑(なめ)らかな言葉。
昔、昔に聴いた、愛おしくて切ない、──。
透明な、水のような音が、
耳朶(じだ)を伝い、こころを侵して、
染みついた韻律(いんりつ)が消えない。
忘れられない。
鼓膜震わせる音楽。
解(かい)せない言葉。
ひとつ、ひとつの歌詞(うた)を、愛せなかっ...唄心
-
視線がひとり、
歩きまわり
交わらない直線
不毛さの果ての先で
彼の眸(め)にぶつかった
瞳孔(ひとみ)。
釘付けにされて
心臓(こころ)。
鐘が鳴る
閉じた世界の中に...響恋
-
この世界にある
総ては言葉だけ
視界の果てまで
溢れてる
人の声が浮かぶ
蒼空(そうくう)の下(もと)
はしゃぎ笑う友情たち
秘言(ひめごと)
恋する者たちが交わす
睦言...詩姫
-
翌朝早く、彼女がうちにやって来た。走ってきたらしく、息が切れている。椅子に座らせ、冷蔵庫にあったパック入りのアップルティーをコップに入れて渡す。コップに水滴が付き始め、彼女の呼吸が整い始めた処で、彼女の噤(つぐ)みの口が開いた。
「あのね、わたし、……迷惑だった?」
彼女は目を伏せたまま話をして...巡音の片恋 4
-
「ルキ、ミクを泣かせたというのは本当ですか?」
家に帰ってきたルカ姉が、俺を見るなりそう聞いてきた。どうやらあれを誰かに見られていたらしい。あそこは誰でも利用可能で、かつ、常に誰かがいるような場所だ。誰が見ていたとしてもおかしくはない。
「あー、泣かしたっつーか泣かれたっつーか……」
「泣いたのは...巡音の片恋 3
-
あの日以来、彼女は気に入った曲が見つかる度に俺の処に来ては、彼女だけの指定席に座り、曲を聴かせてくれるようになった。彼女のオススメは、必ずしも俺の好みに当てはまるわけではなかったが、ひとつの曲に対して意見を云い合うことは、純粋に楽しかった。
彼女のオススメが俺の好きな曲として増えてきた頃、またあ...巡音の片恋 2
-
「聞いてー、ルキ君! ルカさんのね、新曲が出たんだよー!!」
テンション高く、まっすぐ俺の処にやってくるから何かと思えば。
「ふーん」
また、姉貴の話。
「すぐにダウンロードしちゃったー。すっごくいい曲だから、ルキ君も聴いてー」
「……めんどい」
「えー何でー!? すっごく恰好良くて、素敵なんだ...巡音の片恋 1
-
玻璃に刺されし眼球を、
喰らう女に四肢は無し。
手ばかり独り、蠢き這う。
片方(かたへ)に侍れり愛(かな)しき少女の、
隻眼(せきがん)なるいと甲斐甲斐し。
少女が利き眼の終わりに見しは、
笑みの姿の銀の匙。
訪う来客。然(さ)の幹登り、
頬に触れたる女の指先。
紅(べに)に浮かべし笑み、...眼球喰らいの四肢なき女
-
森に覆われ眠る
木漏れ日の眩しさと
睡蓮の白い手に
呼び起こされて
目覚めてもなお残る
甘く気怠い夢が
今を蝕むほどに
ただただ欲しい
しずむ
夜に...浮かぶ水と沈む夜に