胤成林檎

探し物が無いのは
失くす物が無いだけでしょう？
信じたい
小さな自己暗示
月日は過去を洗い
全てを零（ぜろ）で塗り潰す
遠い日に
亡くした君さえも
全て忘れて　摘み取ってしまえたら
葡萄酒色（ワインレッド）の記憶を飲む苦い苦悩...

【一人の魂に宿った二つの人格
　あたかも鋏の二刃のように
　彼らは二つで一つだった　】

いつしか少女の心には　
対成す　二刃（ふたは）の鋏＜人格＞　

姉のカイン　
妹アベル　...

君の細い首の　あのぬくもりが
今もこの手の中で　よみがえる
傍にいる　だけで　幸せでした
どうしてかな　分かっていたはずなのに
いつも神様は　叶えはしない
けれど　抱き続けている　この願い
願わくば　どうか　この一言を
君に伝える術（すべ）を　　僕にください
君の　記憶に　耐え切れずに
足は　ひとり...

君はまだこの地へ　足を運ぶのだね
右手には白い花を
誰もまだこの地を　見つけられずに
一人　夢を見る
あなたは　許し求め　私に　ごめんねと　繰り返すの
懺悔ならば　今は聞き飽きた
一緒には　生きられないの　分からない？
あなたの手　白い手で　奪われた鼓動
恨む　暇　さえすら　くれないつもり？　嗚呼…...

「あぁ…ごめんなさい」
むかしむかしあるところに
謀略渦巻く国の中
平穏の価値を知るは
澄んだ緑髪の街娘
望まれ生まれた　この命
平和のためと言い聞かせ
終わりのために演じてる
亡国の民の筋書きを
青の王子がお忍びで...