【一人の魂に宿った二つの人格
 あたかも鋏の二刃のように
 彼らは二つで一つだった 】

いつしか少女の心には 
対成す 二刃(ふたは)の鋏<人格> 

姉のカイン 
妹アベル 

憂いと罪の記憶片は 
すべてカインだけのモノ 
眩い(まばゆい)記憶に包まれてアベルは幸せだった 

父も母もいない 
愛も知らない 
いつも私の中 カインはいてくれた 
どんなにつらい日々だって カインがいれば 
優しいその声が響けば 全て 忘れられた 


〔The closer to the light, the darker shade will be〕
〔Darkness stagnant  on the back of a blade〕

神様はいない 
〔Why do I play such a role〕
幸福はあの子だけ 



【人間は不平等に生まれ、
 不条理に死んでゆく

 カインに提示された一つの真理

 暗闇を知らない片刃
 暗闇から生まれた片刃

 二刃は不平等に生まれ
 不安定な均衡を保ち続けた
 
 不条理な記憶の配分は
 やがて
 片刃を歪めていくことだろう

 不安定な親愛と羨望の天秤は
 やがて
 片刃を狂わせるだろう

 不平等と不安定と不条理の果てに
 鋏はようやく

 崩壊の時を迎える】



月日 めぐり続け 
やがてアベルは恋を患った
陽だまりの記憶の欠片は 
夜を滅ぼす 

「もう さよならしよ?」 
暗い記憶の途絶えたあの日 
日向の彼女の裏切りの言葉が 
影に今灯し始めた憎悪の 炎 


記憶を分けた花鋏 
片刃(かたは)の向こう側に 闇は果てなく 
記憶を分けた花鋏 
刃(やいば)に潜む真実 虚構のロンド<輪舞曲> 
          

鋏は 閉じられ 二つの 記憶が繋がり始めて… 




【開かれた鋏はいつかは閉じられる
   …それは切り裂くという行為を伴って


 「ねぇアベル…願いを叶えてあげる」

 カインが言葉と共に返した一つの記憶

 それは一つの存在理由であり忌まわしい過去

 鋏が開かれたあの日、
 一人の少女が二人となった始まりの記憶… 】

遠い昔 
カインの記憶 
父と母の優しい顔 

貧しい家 
不作と飢饉 
父の 両手は 少女の首に 
もがいた刹那に  少女は掴んだ 
鋏が 散らす  紅(くれない) 

【アベルの忘れていた 確かな罪
 
 何人(なんびと)であれ、犯した罪の闇からは逃げられない

 終幕の足音は忍び寄り
 憎しみの炎が 消えゆく片刃を赤々と照らす

 取り残される片刃<アベル>を
 炎に融けゆく片刃<カイン>は許すことなく…

 柘榴色の劫火が揺らめく夜
 炎は最後の輝きをみせた 】

 あの子は 知らない 
 幸福の餌(え)は犠牲 
 払った代償の見返りはない 

 私は要らない 
 全て返して逝くわ 
 けれど 一つ幸せの欠片 
 奪ってあげる 

絆を裂いた花鋏 

〔The broken shears can not return to an original state〕



アベルがふと目を覚ますと 
カインはいない 
ただ右手の中に 
記憶の花鋏 

床を染め上げる 錆色(さびいろ) 
むせる香り 

鋏と服に染み込んだ 
同じ 罪の色 

赤い水面(みなも)に 沈むは 
アベルの愛した 唯一の 
彼 




【朝日の中に響く 少女の叫び

 片刃を失った鋏に居場所を与えるほど

 神は優しく無いのだから 】

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Secateur

【】文字ナレ 〔〕コーラス
しえるんさんの曲に歌詞を書かせていただきました!
http://piapro.jp/content/burbufukjozfhve4


ニコニコ動画
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6749335

閲覧数:784

投稿日:2009/01/07 23:33:22

文字数:1,528文字

カテゴリ:歌詞

ブクマつながり

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